751.耳管開放症の漢方治療(4)

症例409(当院の漢方著効例9)、510、535(当院の漢方著効例11)に引き続き、耳管開放症と思われる症例です。
症例は、41歳女性です。
約2ヶ月前から、めまいがあり、近くの耳鼻科を受診したところ、聴力検査で、「低い音が聞こえていない。メニエール病だ。」といわれ、イソバイドシロップ(利尿薬の一種。尿の量を増やし、間接的に内耳のリンパ液を排出してそれらの症状を改善する。主に、めまいや耳鳴り、難聴などをともなうメニエール病の治療に用いられる)の処方を受けました。しかし、全くよくならないため、令和2年5月26日、漢方治療を求めて来院されました。
身長158.5cm、体重44kg、BMI17.6。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
詳しく聞くと、耳閉感・自声強聴(自分の声がひびく)もあり、耳管開放症と考え、加味帰脾湯(かみきひとう;症例45、193、239、291、308、409、510,535参照)と、耳鼻科の先生が、メニエール病といわれているので、五苓散(ごれいさん;症例215参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、6月26日に来られ、「飲み始めて4日目から症状がすべて消えました。」といわれました。
そして、症例535の方は、「漢方がまずくて、オブラートに包んで飲んでいます。」といわれましたが、この方は、「イソバイドシロップはもうまずくてしかたありませんでしたが、漢方はおいしくて、飲むとほっとします。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役にたててよかったです。

イソバイドシロップをYahoo!知恵袋で調べてみると、”イソバイドシロップが不味すぎて飲めません”と、以下のような相談が寄せられていました。

軽度の感音性難聴です。内リンパの影響らしいです。耳鳴りに処方されたアデホスコーワ顆粒と漢方は飲めますが、イソバイドシロップだけまずくてのんでません。イソバイドシロップってそんなに効果ありますか?耳鳴りに悩まされています。
それに対するベストアンサーに選ばれた回答が、
イソバイドシロップの目的が脳圧を下げるところにあり、メニエール病にも用いるので、内リンパとは関係あるのではないでしょうか。私は脳浮腫の治療のために飲んでいましたが。トイレも近くなるけど、胃が弱い人は胃にもきますね(苦笑)。ジェネリックのイソソルビドの方が、個人的にはやや飲みやすいように思います。イソバイドの後発品はない、と言われていますが、先生にお尋ねになってみては。薬局でもジュースや炭酸で割って飲んでも良い、と言われました。私は普通に水で薄めて飲んでいました。
でした。私は飲んだことがないのでわかりませんが、相談者は漢方は飲めると言われていますので、相当まずいんでしょうね(笑)。

メニエール病については、こちらいのうえクリニック
五苓散も紹介されています。
耳管開放症については、こちらメディカルノート

752.幼児の口の周りの湿疹の漢方治療

症例は、2歳男児です。
身長85cm、体重10kg。
お母さんが当院で漢方の投薬を受けています。
風邪のあと、鼻水・鼻閉が続くと、令和1年11月6日、相談を受けました。葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)を処方し、続けて飲まれていました。
令和2年1月20日、「顔がかさかさする。」とのことでしたので、紫雲膏(しうんこう;症例54参照)を処方させていただきました。
5月8日、「口の周りの湿疹がひどく(よだれかぶれ)、紫雲膏をいやがる。」とのことでしたので、人参湯(にんじんとう;症例8、110参照)を処方させていただきました。7月2日、来られた時には、完全に治癒しておりました。お父さんが、「塗り薬より、よく効きますね。また味も気に入ったようで喜んで飲んでくれます。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役にたててよかったです。

 

よだれかぶれに関しては、こちら はしもと小児科

「よだれかぶれ」の病態は、IV型アレルギーのひとつである接触皮膚炎で、”よだれ”という刺激がある間はすっかりきれいになりませんと、記載されています。赤ちゃんや幼児の肌にステロイドを塗るのはためらわれますね。人参湯でよだれ自身をとめればよいのです。

漢方医学的な唾液過多の病態と主な漢方薬については、こちらKampo Square

本症例も、症例110にも記載しました裏寒(消化管の機能が悪くなり、体力が落ちて食欲もなくなっているような場合)によって唾液が多くなっている病態だと考えられます。人参湯がよく効きます。
「よだれが多い時は人参湯」というのは昔からいわれてきたことです。

753.にきびの漢方治療

症例は、13歳女性です。
2年くらい前から、顔のにきび(おでこが中心)が出現し、洗顔等で様子をみていましたが改善せず、当院の漢方でよくなった同級生の紹介で、令和2年4月21日、赤穂市から来院されました。
身長163.0cm、体重56kg、BMI21.1。
舌は異常ありませんでした。
他の症状として、汗をかきやすい、しもやけ、鼻血がでやすいがあります。
もやもや病で、今まで2回手術を受け、それによるてんかん予防のための薬、エクセランと貧血治療剤のフェロミア(鉄剤)を内服されています。
紹介者と同じ、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例306参照)を処方したところ、5月19日に来られ、「にきびが膿むことはなくなりました。」といわれましたが、いまいちなので、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう;症例6、27、55,487参照)を追加したところ、6月16日に来られ、「おでこがとてもきれいになりました。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役にたててよかったです。

なお、荊芥連翹湯を追加したのは、近畿大学皮膚科の栁原茂人先生が講演会で、「おでこや鼻(Tゾーン)といった油っぽい部位のにきびには、荊芥連翹湯。頬や顎(Uゾーン)には、柴胡清肝湯(さいこせいかんとう;症例55参照)がよい。」と教えていただいたからです。
その通り、よく効きました。
柴胡清肝湯には、うるおい成分の天花粉という生薬が配合されています。

754.両まぶたの発赤・かゆみの漢方治療

次の症例は48歳、女性です。
数年前から、両目のまぶたが赤く腫れ、かゆみも強いとのことで、3か所の皮膚科を受診されましたが、全く改善しないため、知人の紹介で、令和2年7月21日当院へたつの市から来院されました。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
身長154cm、体重50kg、BMI21.1。
他の症状として、下痢をしやすい・寒がり・足が冷えるがあります。
梔子柏皮湯(ししはくひとう;症例127、314、443、588、686参照)六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477、478、480、488参照)コウジン末(;症例449参照)を1日2回で1ヶ月分処方したところ、8月14日に来られ、「赤味も引いて、痒みもありません。下痢も治っています。」といわれました。

漢方がお役にたててよかったです。
同じような症例を、症例276、症例686にも載せております。


梔子柏皮湯について

症例276にも記載しましたが、梔子柏皮湯は少陽病期虚実間証の薬方であり、山梔子(さんしし)、 黄柏(おうばく)、甘草(かんぞう)の三つの生薬から構成されています。皮膚瘙痒感に頻用される薬方であり、教科書的には皮疹に熱感を伴うことが多いとの記載があります。
中医学的には、本剤は、肝胆湿熱からの肝脾不和による脾の運化機能の失調を改善するとされています。
ストレスを受けると漢方では、五臓の
「肝」が影響を受けます。肝は自律神経を司るところで、この影響を大きく受けるのが五臓の「脾(胃腸系)」です。この肝と脾の調和が乱れる状態を「肝脾不和」といいます。
脾の運化機能については、こちらを参照泰生堂薬局
眼と五臓の関係を論じた「五輪学説」では脾は肌肉を主っているため、「上下の眼瞼は脾胃に属す」とされ、眼瞼および眼瞼周囲の病変から脾胃の異常を考える必要があります。また、「足の少陽胆経」は、胆経に属する足を流れる陽経の経絡です。肝臓と胆嚢は共に中国の五行(木、火、土、金、水)でいうと木に属するため密接な関係を持ちます。
その経脈は眼の外角・耳前後・頸側・顎部や脇・肋・腹・膝・下腿外側を循行します。
そのため「足の少陽胆経」の支配を受ける眼瞼、口囲、口唇をはじめとした顔面や耳前後、頸側や顎部の皮膚病変は、その病因として脾胃や肝胆系の異常を考える必要があります。

(参考文献 眼瞼や口囲などの顔面の湿疹・皮膚炎に対する梔子柏皮湯の使用経験(第2報) 手塚匡哉 漢方研究 2004.5(168-171))

755.脂漏性皮膚炎(湿疹)の漢方治療

次の症例は26歳、男性です。
約1年半前から、頭皮に赤いポツポツ、ニキビ様の発疹が出現し、痒みやフケが目立つようになったそうです。皮膚科で脂漏性皮膚炎と診断され、塗り薬を処方されるも改善せず、脂漏性皮膚炎専用のシャンプーもいろいろ試されたようですが効果なかったそうです。2ヶ月前よりは、お酒をやめたり、ビタミンBの内服を試したりしましたが、それも無効でした。
そんな時、当院のホームページを見て、令和2年6月20日当院へたつの市から来院されました。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
身長168cm、体重62kg、BMI21.9。
他の症状として、イライラ・下痢をしやすい・汗をかきやすい・鼻水・肩こり・足が冷えるがあります。
治頭瘡一方(ちづそういっぽう;症例724、723参照)六君子湯(りっくんしとう;症例97参照))を合わせて1日3回処方したところ、7月25日に来られ、「少しましです。」といわれましたので、治頭瘡一方2包に、柴胡清肝湯(さいこせいかんとう;症例55参照)2包を追加(清肝解毒)して、六君子湯を眠前に1包処方したところ、8月29日に来られ、「すっかりよくなりました。」といわれました。

漢方がお役にたててよかったです。

脂漏性皮膚炎(湿疹)については、こちらMedical Note

脂漏性皮膚炎(湿疹)の写真は、こちらをクリック

脂漏性皮膚炎(湿疹)については、高橋道史先生の報告が、病態の把握の参考になります。

「前頭部から後頭部までわずかに両側を残して脂漏性の湿疹で、その浸出物が堆積して、あたかも鉄甲か鉄鍋でもかぶったようになっている。一面べっとりとしていて、頭部の中心部のの毛髪は有るか無いかほとんど判明しない。その堆積を圧すると脂漏性の膿汁が排出される。これが臭気、鼻を突くのである。掻痒感はなはだしく、手ぬぐいの上から掻くためか、かぶった手ぬぐいは分泌物で滲(にじ)んでいる。この湿疹は頭部のみで、他の部位には少しも存在しない…。」
治頭瘡一方の適応病態を理解するのにこの記載は的確で参考になります。

756.気うつの漢方治療中に口腔アレルギーが改善した症例

症例は、57歳、女性です。令和2年2月頃より、夕方になるとのどの痛みが出現し、それが朝まで続き、起きてしまえばいったん収まるそうです。それとは別に、胸の違和感があり、みぞおち辺りや、左肩、乳房、胸の真ん中だったり、背中だったり、場所は移動しますが、鈍い痛みがずっとあったそうです。
3月3日、入浴後からものすごくしんどくなり、息が上がるような感じが出現し、次の日に近医受診し、心電図や胸部X線写真を撮られましたが、異常なし。
それから1週間は、動くのが怖く、寝てばかりで、少し動くと息がハァハァいい、だんだんと背中の痛みが強くなったそうです。
3月10日、鍼治療にいくと、「胸に熱がこもっているかんじですね。」といわれたそうです。
それで、背中の痛みは楽になったそうです。
しかし、体のだるさがとれず、3月12日再び病院を受診し、24時間ホルター心電図をとられましたが、やはり異常なしといわれました。
3月18日、のどの痛みが続くため、今度は耳鼻科を受診されましたが、異常なく、消炎鎮痛剤を1週間処方されました。
それから、少しずつ動けるようになり、自信もついてきて、買い物にも出かけられるにもなったのに、また突然胸の苦しい感じに襲われ、歩くのがやっとの状態になったそうです。
とにかく突然に来るので、怖くて仕方ないそうです。
それとは別に、りんご・キーウィ・いちじく・ビワ・柿・桃・梨・サクランボ・スモモ・ベリー系を食べると、口唇やのどが痒くなるそうです(口腔アレルギー)。
そんな時、当院のホームページを見て、令和2年3月28日当院へ豊岡市から来院されました。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
身長154cm、体重41.5kg、BMI21.9。
他の症状として、些細なことが気になる・寝つきが悪い・不快な夢を見る・食後すぐに眠くなる・寒がり・耳鳴り・鼻づまり・息切れ・動悸・髪が抜けやすい・肩こりなどがあります。
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440、463、515、542、550、555、558、565、577、585、594、599、602、603、626、638、657、663、666、677、738、741参照)コウジン末(;症例449参照)を1日2回で1ヶ月分処方したところ、4月18日に来られ、「のどはましになりましたが、夜寝る時に、足の裏がほてる(症例466、658参照)。」といわれましたので、八味地黄丸(はちみじおうがん;症例42、58参照)を追加して、遠方のため2ヶ月分処方しました。
その後、9月5日に来られた時には、「ずっと調子よかったのですが、8月に愛犬がなくなり、体調が一時また悪化したそうですが、すぐに改善しました。」といわれました。
また、「さくらんぼや梨など果物がたべれるようになりました。」といわれました。
気虚に使う漢方薬で、早ければ半年ぐらいで花粉症が改善しますので、免疫系もよくなってきたのだと考えられました。

漢方がお役にたててよかったです。

口腔アレルギーについては、こちらAll About