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751.耳管開放症の漢方治療(4)

症例409(当院の漢方著効例9)、510、535(当院の漢方著効例11)に引き続き、耳管開放症と思われる症例です。
症例は、41歳女性です。
約2ヶ月前から、めまいがあり、近くの耳鼻科を受診したところ、聴力検査で、「低い音が聞こえていない。メニエール病だ。」といわれ、イソバイドシロップ(利尿薬の一種。尿の量を増やし、間接的に内耳のリンパ液を排出してそれらの症状を改善する。主に、めまいや耳鳴り、難聴などをともなうメニエール病の治療に用いられる)の処方を受けました。しかし、全くよくならないため、令和2年5月26日、漢方治療を求めて来院されました。
身長158.5cm、体重44kg、BMI17.6。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
詳しく聞くと、耳閉感・自声強聴(自分の声がひびく)もあり、耳管開放症と考え、加味帰脾湯(かみきひとう;症例45、193、239、291、308、409、510,535参照)と、耳鼻科の先生が、メニエール病といわれているので、五苓散(ごれいさん;症例215参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、6月26日に来られ、「飲み始めて4日目から症状がすべて消えました。」といわれました。
そして、症例535の方は、「漢方がまずくて、オブラートに包んで飲んでいます。」といわれましたが、この方は、「イソバイドシロップはもうまずくてしかたありませんでしたが、漢方はおいしくて、飲むとほっとします。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役にたててよかったです。

イソバイドシロップをYahoo!知恵袋で調べてみると、”イソバイドシロップが不味すぎて飲めません”と、以下のような相談が寄せられていました。

軽度の感音性難聴です。内リンパの影響らしいです。耳鳴りに処方されたアデホスコーワ顆粒と漢方は飲めますが、イソバイドシロップだけまずくてのんでません。イソバイドシロップってそんなに効果ありますか?耳鳴りに悩まされています。
それに対するベストアンサーに選ばれた回答が、
イソバイドシロップの目的が脳圧を下げるところにあり、メニエール病にも用いるので、内リンパとは関係あるのではないでしょうか。私は脳浮腫の治療のために飲んでいましたが。トイレも近くなるけど、胃が弱い人は胃にもきますね(苦笑)。ジェネリックのイソソルビドの方が、個人的にはやや飲みやすいように思います。イソバイドの後発品はない、と言われていますが、先生にお尋ねになってみては。薬局でもジュースや炭酸で割って飲んでも良い、と言われました。私は普通に水で薄めて飲んでいました。
でした。私は飲んだことがないのでわかりませんが、相談者は漢方は飲めると言われていますので、相当まずいんでしょうね(笑)。

メニエール病については、こちらいのうえクリニック
五苓散も紹介されています。
耳管開放症については、こちらメディカルノート

752.幼児の口の周りの湿疹の漢方治療

症例は、2歳男児です。
身長85cm、体重10kg。
お母さんが当院で漢方の投薬を受けています。
風邪のあと、鼻水・鼻閉が続くと、令和1年11月6日、相談を受けました。葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)を処方し、続けて飲まれていました。
令和2年1月20日、「顔がかさかさする。」とのことでしたので、紫雲膏(しうんこう;症例54参照)を処方させていただきました。
5月8日、「口の周りの湿疹がひどく(よだれかぶれ)、紫雲膏をいやがる。」とのことでしたので、人参湯(にんじんとう;症例8、110参照)を処方させていただきました。7月2日、来られた時には、完全に治癒しておりました。お父さんが、「塗り薬より、よく効きますね。また味も気に入ったようで喜んで飲んでくれます。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役にたててよかったです。

よだれかぶれに関しては、こちら はしもと小児科

「よだれかぶれ」の病態は、IV型アレルギーのひとつである接触皮膚炎で、”よだれ”という刺激がある間はすっかりきれいになりませんと、記載されています。赤ちゃんや幼児の肌にステロイドを塗るのはためらわれますね。人参湯でよだれ自身をとめればよいのです。

漢方医学的な唾液過多の病態と主な漢方薬については、こちらKampo Square

本症例も、症例110にも記載しました裏寒(消化管の機能が悪くなり、体力が落ちて食欲もなくなっているような場合)によって唾液が多くなっている病態だと考えられます。人参湯がよく効きます。
「よだれが多い時は人参湯」というのは昔からいわれてきたことです。

753.にきびの漢方治療

症例は、13歳女性です。
2年くらい前から、顔のにきび(おでこが中心)が出現し、洗顔等で様子をみていましたが改善せず、当院の漢方でよくなった同級生の紹介で、令和2年4月21日、赤穂市から来院されました。
身長163.0cm、体重56kg、BMI21.1。
舌は異常ありませんでした。
他の症状として、汗をかきやすい、しもやけ、鼻血がでやすいがあります。
もやもや病で、今まで2回手術を受け、それによるてんかん予防のための薬、エクセランと貧血治療剤のフェロミア(鉄剤)を内服されています。
紹介者と同じ、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例306参照)を処方したところ、5月19日に来られ、「にきびが膿むことはなくなりました。」といわれましたが、いまいちなので、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう;症例6、27、55,487参照)を追加したところ、6月16日に来られ、「おでこがとてもきれいになりました。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役にたててよかったです。

なお、荊芥連翹湯を追加したのは、近畿大学皮膚科の栁原茂人先生が講演会で、「おでこや鼻(Tゾーン)といった油っぽい部位のにきびには、荊芥連翹湯。頬や顎(Uゾーン)には、柴胡清肝湯(さいこせいかんとう;症例55参照)がよい。」と教えていただいたからです。
その通り、よく効きました。
柴胡清肝湯には、うるおい成分の天花粉という生薬が配合されています。

754.両まぶたの発赤・かゆみの漢方治療

次の症例は48歳、女性です。
数年前から、両目のまぶたが赤く腫れ、かゆみも強いとのことで、3か所の皮膚科を受診されましたが、全く改善しないため、知人の紹介で、令和2年7月21日当院へたつの市から来院されました。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
身長154cm、体重50kg、BMI21.1。
他の症状として、下痢をしやすい・寒がり・足が冷えるがあります。
梔子柏皮湯(ししはくひとう;症例127、314、443、588、686参照)六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477、478、480、488参照)コウジン末(;症例449参照)を1日2回で1ヶ月分処方したところ、8月14日に来られ、「赤味も引いて、痒みもありません。下痢も治っています。」といわれました。

漢方がお役にたててよかったです。
同じような症例を、症例276、症例686にも載せております。


梔子柏皮湯について

症例276にも記載しましたが、梔子柏皮湯は少陽病期虚実間証の薬方であり、山梔子(さんしし)、 黄柏(おうばく)、甘草(かんぞう)の三つの生薬から構成されています。皮膚瘙痒感に頻用される薬方であり、教科書的には皮疹に熱感を伴うことが多いとの記載があります。
中医学的には、本剤は、肝胆湿熱からの肝脾不和による脾の運化機能の失調を改善するとされています。
ストレスを受けると漢方では、五臓の
「肝」が影響を受けます。肝は自律神経を司るところで、この影響を大きく受けるのが五臓の「脾(胃腸系)」です。この肝と脾の調和が乱れる状態を「肝脾不和」といいます。
脾の運化機能については、こちらを参照泰生堂薬局
眼と五臓の関係を論じた「五輪学説」では脾は肌肉を主っているため、「上下の眼瞼は脾胃に属す」とされ、眼瞼および眼瞼周囲の病変から脾胃の異常を考える必要があります。また、「足の少陽胆経」は、胆経に属する足を流れる陽経の経絡です。肝臓と胆嚢は共に中国の五行(木、火、土、金、水)でいうと木に属するため密接な関係を持ちます。
その経脈は眼の外角・耳前後・頸側・顎部や脇・肋・腹・膝・下腿外側を循行します。
そのため「足の少陽胆経」の支配を受ける眼瞼、口囲、口唇をはじめとした顔面や耳前後、頸側や顎部の皮膚病変は、その病因として脾胃や肝胆系の異常を考える必要があります。

(参考文献 眼瞼や口囲などの顔面の湿疹・皮膚炎に対する梔子柏皮湯の使用経験(第2報) 手塚匡哉 漢方研究 2004.5(168-171))

755.脂漏性皮膚炎(湿疹)の漢方治療

次の症例は26歳、男性です。
約1年半前から、頭皮に赤いポツポツ、ニキビ様の発疹が出現し、痒みやフケが目立つようになったそうです。皮膚科で脂漏性皮膚炎と診断され、塗り薬を処方されるも改善せず、脂漏性皮膚炎専用のシャンプーもいろいろ試されたようですが効果なかったそうです。2ヶ月前よりは、お酒をやめたり、ビタミンBの内服を試したりしましたが、それも無効でした。
そんな時、当院のホームページを見て、令和2年6月20日当院へたつの市から来院されました。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
身長168cm、体重62kg、BMI21.9。
他の症状として、イライラ・下痢をしやすい・汗をかきやすい・鼻水・肩こり・足が冷えるがあります。
治頭瘡一方(ちづそういっぽう;症例724、723参照)六君子湯(りっくんしとう;症例97参照))を合わせて1日3回処方したところ、7月25日に来られ、「少しましです。」といわれましたので、治頭瘡一方2包に、柴胡清肝湯(さいこせいかんとう;症例55参照)2包を追加(清肝解毒)して、六君子湯を眠前に1包処方したところ、8月29日に来られ、「すっかりよくなりました。」といわれました。

漢方がお役にたててよかったです。

脂漏性皮膚炎(湿疹)については、こちらMedical Note

脂漏性皮膚炎(湿疹)の写真は、こちらをクリック

脂漏性皮膚炎(湿疹)については、高橋道史先生の報告が、病態の把握の参考になります。

「前頭部から後頭部までわずかに両側を残して脂漏性の湿疹で、その浸出物が堆積して、あたかも鉄甲か鉄鍋でもかぶったようになっている。一面べっとりとしていて、頭部の中心部のの毛髪は有るか無いかほとんど判明しない。その堆積を圧すると脂漏性の膿汁が排出される。これが臭気、鼻を突くのである。掻痒感はなはだしく、手ぬぐいの上から掻くためか、かぶった手ぬぐいは分泌物で滲(にじ)んでいる。この湿疹は頭部のみで、他の部位には少しも存在しない…。」
治頭瘡一方の適応病態を理解するのにこの記載は的確で参考になります。

756.気うつの漢方治療中に口腔アレルギーが改善した症例

症例は、57歳、女性です。令和2年2月頃より、夕方になるとのどの痛みが出現し、それが朝まで続き、起きてしまえばいったん収まるそうです。それとは別に、胸の違和感があり、みぞおち辺りや、左肩、乳房、胸の真ん中だったり、背中だったり、場所は移動しますが、鈍い痛みがずっとあったそうです。
3月3日、入浴後からものすごくしんどくなり、息が上がるような感じが出現し、次の日に近医受診し、心電図や胸部X線写真を撮られましたが、異常なし。
それから1週間は、動くのが怖く、寝てばかりで、少し動くと息がハァハァいい、だんだんと背中の痛みが強くなったそうです。
3月10日、鍼治療にいくと、「胸に熱がこもっているかんじですね。」といわれたそうです。
それで、背中の痛みは楽になったそうです。
しかし、体のだるさがとれず、3月12日再び病院を受診し、24時間ホルター心電図をとられましたが、やはり異常なしといわれました。
3月18日、のどの痛みが続くため、今度は耳鼻科を受診されましたが、異常なく、消炎鎮痛剤を1週間処方されました。
それから、少しずつ動けるようになり、自信もついてきて、買い物にも出かけられるにもなったのに、また突然胸の苦しい感じに襲われ、歩くのがやっとの状態になったそうです。
とにかく突然に来るので、怖くて仕方ないそうです。
それとは別に、りんご・キーウィ・いちじく・ビワ・柿・桃・梨・サクランボ・スモモ・ベリー系を食べると、口唇やのどが痒くなるそうです(口腔アレルギー)。
そんな時、当院のホームページを見て、令和2年3月28日当院へ豊岡市から来院されました。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
身長154cm、体重41.5kg、BMI21.9。
他の症状として、些細なことが気になる・寝つきが悪い・不快な夢を見る・食後すぐに眠くなる・寒がり・耳鳴り・鼻づまり・息切れ・動悸・髪が抜けやすい・肩こりなどがあります。
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440、463、515、542、550、555、558、565、577、585、594、599、602、603、626、638、657、663、666、677、738、741参照)コウジン末(;症例449参照)を1日2回で1ヶ月分処方したところ、4月18日に来られ、「のどはましになりましたが、夜寝る時に、足の裏がほてる(症例466、658参照)。」といわれましたので、八味地黄丸(はちみじおうがん;症例42、58参照)を追加して、遠方のため2ヶ月分処方しました。
その後、9月5日に来られた時には、「ずっと調子よかったのですが、8月に愛犬がなくなり、体調が一時また悪化したそうですが、すぐに改善しました。」といわれました。
また、「さくらんぼや梨など果物がたべれるようになりました。」といわれました。
気虚に使う漢方薬で、早ければ半年ぐらいで花粉症が改善しますので、免疫系もよくなってきたのだと考えられました。

漢方がお役にたててよかったです。

口腔アレルギーについては、こちらAll About

757.過呼吸症候群の漢方治療

症例は、11歳、女児(小学6年生)です。
令和2年6月頃より、たまに過呼吸症候群を起こすようになったそうですが、夏休み明けからは、毎日、数回発作を起こすようになったそうです。
そして、8月20日には、とうとう学校で意識がなくなり、救急搬送されたそうです。
かかりつけの小児科医から、漢方薬の抑肝散(よくかんさん;症例24、25、144、479、722、728、735、736参照)を処方されましたが、全く効かなかったそうです。
知人の紹介で、令和2年8月29日、当院へ加古川市から来院されました。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、また、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、「気虚」+「お血」体質と考えられました。
身長156cm、体重53kg、BMI21.8。
他の症状として、物事に驚きやすい・些細なことが気になる・乗り物酔いをしやすい・口内炎ができやすい・鼻血が出やすいなどがあります。
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440、463、515、542、550、555、558、565、577、585、594、599、602、603、626、638、657、663、666、677、738、741、756参照)甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう;症例61、168、434、460、461、500、502、551参照)を1日2回で、合わせて1ヶ月分処方したところ、9月26日に来られ、「飲み始めて3日目から一度も発作は出なくなりました。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役にたててよかったです。過呼吸症候群については症例781も参照ください。

過呼吸症候群については、こちら近畿メディカルサポートセンタ

758.寒冷じん麻疹の漢方治療

症例は、45歳、男性です。
今までは、近くの皮膚科で出された抗アレルギー薬のタリオン単独で、じん麻疹はでなかったそうですが、令和2年12月末から、じん麻疹がひどくなり、クラリチン、セレスタミン、ザイザルを2週間内服してもおさまらないため、令和3年1月20日、漢方治療を求めて当院へ来院されました。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
身長171cm、体重78.0kg、BMI26.7と軽度肥満を認めます。
他の症状として、喉から胸のあたりが締め付けられる感じ・みぞおちが痞える・疲れやすい・寒がり・のどが渇く・耳鳴り・頭痛・肩こり・皮膚がかさかさするなどがあります。
寒がりと風呂に入り、ぬくもるとじん麻疹が改善するの2点から、寒冷じん麻疹と診断し、補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、328、370、407、410、413、425、442、449、465、476、511、512、551、583、604、625、648、655、748参照)とコウジン末(;症例449参照)麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう;症例49、80参照)を加えて1日2回処方したところ、2月1日に来られ、「全くじん麻疹がでなくなりました。」といわれましたので、さらに1か月分処方させていただきました。

漢方がお役にたててよかったです。

寒冷じん麻疹については、当院の漢方著効例2の症例80を参照下さい。

759.手術後の傷跡が治らないの漢方治療

症例は、65歳、男性です。

普段、糖尿病、高血圧症、高尿酸血症で通院中の患者さんです。
前立腺癌がみつかり、令和2年10月21日、腹腔鏡下手術(前立腺を精嚢や精管などの周囲ごと摘出する)リンパを受けられました。手術は成功しましたが、傷跡がいつまでも治らなかったそうです。
令和3年2月15日、定期の診察に来られた時に相談を受けました。紫雲膏(しうんこう;症例54参照)を処方させていただいたところ、3月19日に来られ、「塗ってから、1週間でうそのように治りました。もっと早く相談していればよかったです。」といわれました。

お安い御用です。漢方がお役にたててよかったです。

傷の治りが悪いのは、糖尿病が関係したのかもしれません。こちらを参照シンクヘルスブログ

ただし、この方は、HbA1cが7.1でしたので、それほど悪いコントロールではありませんでした。

760.犬アレルギーの漢方治療

症例は、5歳、男児です。
1週間前に、自宅で犬を飼いだしてから、一緒に遊ぶたびに目の眼球結膜の部分(白目のところ)が、ブヨブヨになり、すごく痒くなるそうです。知人の紹介で、令和3年2月9日、漢方治療を求めて新宮町から当院へ来院されました。
他の症状として、怒りっぽい、顔がのぼせ、ほてる・口内炎ができやすい、鼻水などがあります。
アレルギー性結膜炎によく使う、越婢加朮湯(えっぴかじゅっとう;症例109、184、245参照)1包を、2回にわけて朝・夕投与したところ、3月23日に来られ、「犬と遊んでも全く症状がでなくなりました。」と、お母さんがいわれました。

大好きな犬と遊べないなんて、かわいそうです。
漢方がお役にたててよかったです。

761.にきびの漢方治療

症例は、20歳女性です。
学生の頃から、にきび(おでこ、みけん、あごが中心)が治らず、昨年、主に漢方を用いて治療をする姫路市の皮膚科へ行き、半年ほど治療を受けましたが、一向に改善しないため令和3年2月22日、来院されました。
身長163.0cm、体重48kg、BMI18.0。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
他の症状として、のどが痞える・食後の眠気・鼻水、鼻づまり(花粉症)があります。
以前の皮膚科では、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例306参照)が使われ、無効でしたので、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう;症例6、27、55,487参照)と、生理前に悪化するとのことでしたので、桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照))を1日2回で処方したところ、3月12日に来られ、「肌がとてもきれいになりました。」と大変喜んでいただきました。
なお、あまりに短期間できれいになったので、3月6日に、同じ皮膚科に通院されていた妹さんも紹介して頂きました。

漢方がお役にたててよかったです。

なお、症例753に書きましたが、荊芥連翹湯を追加したのは、近畿大学皮膚科の栁原茂人先生が講演会で、「おでこや鼻(Tゾーン)といった油っぽい部位のにきびには、荊芥連翹湯。頬や顎(Uゾーン)には、柴胡清肝湯(さいこせいかんとう;症例55参照)がよい。」と教えていただいたからです。
その通り、よく効きました。

762.めまい・むずむず脚症候群の漢方治療

症例は、42歳女性です。
7年間に、耳鼻科でメニエール症候群(感音性難聴・内耳性めまい)と診断されています。以後メリスロンを内服されていますが、季節の変わり目などにめまいがでるそうです。
今回、令和3年2月26日からめまいがでているそうです。
めまいは、揺れるような、吸い込まれるような、ふわふわした感じで、常に車酔いしている感じだそうです。
また、めまいの時、吐き気・嘔吐・頭痛もあり、雨や台風の時などは特に体調不良となるそうです。
令和3年3月22日、知人の紹介で来院されました。
身長160.0cm、体重46.5kg、BMI18.1。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、また、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、「気虚」+「お血」体質と考えられました。
他の症状として、冷え性・腰痛・胃もたれ・胸やけ・下痢・肩こりなどがあります。また、夜下肢の内側がむずむずして眠れないそうです。
五苓散(ごれいさん;症例196参照)と六君子湯(りっくんしとう;症例97参照))とコウジン末(;症例449参照)を合わせて1日2回処方し、加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210参照))を1包眠前に投与したところ、4月21日に来られ、「大きなめまいがしなくなりました。胃腸も調子いいです。むずむずもしなくなりました。漢方が手放せなくなりました。」といわれました。

漢方がお役にたててよかったです。

763.心不全の漢方治療

症例は、85歳男性です。令和3年2月19日昼から、急に体がだるくなり、食欲も全くなくなり、奥さんが当院で漢方薬を処方していたため、午後4時頃来院されました。
立ち上がるのもやっとの状態で、歩くのも、苦しそうでゆっくりとしかできませんでした。
体温は、36.2℃と正常でしたが、血圧146/76、SPO2が、92-93%と低下しており、心電図では、狭心症や心筋梗塞を思わせる所見はなく、胸部X線写真では、心肥大を認めました。金曜日の午後でしたので、状態が悪化したら怖いので、市内の病院に入院の依頼をしましたが、「心不全でしたら他院をあたってください。」と断られました。仕方がないので、心不全に使う、木防已湯(もくぼういとう))と、念のため、九味檳榔湯(くみびんろうとう;症例150、345、346、348、349、406、422、476、581参照))も併用して1週間分処方しました。土曜日・日曜日体調が悪化すれば、救急車を呼ぶように伝えておきました。しかし、翌日返ってきた採血では、NT-proBNPは278と、すぐに循環器科へ紹介する目安の400以下でしたので、ちょっと安心しました。その後、何の連絡もありませんでしたが、5日後急に来られ、別人のようにさっさと歩かれ、にこにこ笑って、「先生は名医や。」とほめていただきました。すっかりよくなったようで、SPO2 97%と正常になっておりました。

木防已湯はラットで大動脈や肺動脈の血管拡張作用心収縮力増強作用などが認められており、主に左室収縮能の低下した心不全に使用される(土倉 潤一郎先生)そうです。

漢方がお役にたててよかったです。

木防已湯はこちらをクリック日本医事新報社

764.漢方で劇的に体調がよくなった症例(1)

症例は、45歳女性です。年のせいか疲れやすい、気持ちが落ち込み何でもないことに悩む・寝つきが悪いなどがあり、令和3年2月1日、知人の紹介で来院されました。
身長163.0cm、体重55.0kg、BMI20.7。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、また、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、「気虚」+「お血」体質と考えられました。
他の症状として、微熱が続く・冷え性・のどが痞える・目がかすむ・痰・皮膚のかゆみ・爪がもろい・胃もたれ・下痢・吐き気などがあります。また、直径7cmの子宮筋腫があり、生理痛・生理血に塊があり、婦人科よりウリウェル(月経困難症治療用低用量ピル)が処方されています。
六君子湯(りっくんしとう;症例97参照))と竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう))とコウジン末(;症例449参照)を合わせて1日2回処方したところ、3月1日に来られ、「吐き気・気分の落ち込みは翌日改善し、1週間ほどして下痢がおさまり、それまでは何もしたくなかったのに、今は新しい趣味を2、3個見つけてやっています。」といわれました。不正出血もなくなったそうです。あまりにメンタルが調子いいので、筋腫の治療もかねて、腸癰湯(ちょうようとう)と六君子湯とコウジン末を合わせて1日2回処方し、竹筎温胆湯は眠前に1回処方したところ、3月30日に来られ、「変わりなく元気です。」といわれ、さらに続けたところ、4月28日に来られ、「そんなに高い山ではありませんが、登山ができるようになりました。夜もよく眠れます。」といわれました。

漢方がお役にたててよかったです。

竹筎温胆湯が不眠に良いというのは、私も千福先生に教えていただきました。小林耳鼻咽喉科
(千福先生の講演会をまとめておられます。私が聞いた講演会の内容と全く同じです。参考にして下さい。)

765.漢方で劇的に体調がよくなった症例(2)

症例は、41歳女性です。生理前に体がだるく寝込む、生理が始まるとおさまるが、排卵前になるとまた同じ症状になる、不眠症(寝つきが悪い・途中で目が覚める)などがあり、令和3年3月6日、姫路市から来院されました。
身長166.0cm、体重68.0kg、BMI24.6。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、また、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、「気虚」+「お血」体質と考えられました。
他の症状として、熱がり、顔がほてる、汗をかきやすい、首や肩の凝り、足がむくむ、足が冷えるなどがあります。補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、328、370、407、410、413、425、442、449、465、476、511、512、551、583、604、625、648、655、748参照)とコウジン末(;症例449参照)加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210参照))を合わせて1日2回処方したところ、3月29日に来られ、「症状がすべてとれました。主人からも元気になったといわれました。」といわれました。
次に、4月28日に来られた時には、「爆睡です。朝までぐっすりと眠れます。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役にたててよかったです。

766.男性不妊症の漢方治療

症例は、28歳男性です。
不妊症の精密検査の結果、奥さんには異常なく、ご主人の精子の運動率が低いといわれたそうです。
令和3年3月26日、知人の紹介で、姫路市から漢方治療を求め来院されました。
身長177.0cm、体重64.0kg、BMI20.4。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認めました。また、腹診で、小腹不仁を認めました。
他の症状として、寝汗をかく、目が疲れるなどがあります。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、328、370、407、410、413、425、442、449、465、476、511、512、551、583、604、625、648、655、748参照)7.5g八味丸40丸(症例530参照)を処方しました。次に4月23日に来られた時には、「特に変わりありません。」といわれました。
そのまま処方を続けたところ、5月26日に来られ、「寝汗をかかなくなりました。」といわれました。
次に7月7日に来られ、「家内が妊娠しました。」といわれました。

漢方がお役にたててよかったです。
男性不妊症については、こちら亀田メディカルセンター

767.メニエール病の漢方治療

症例は、68歳男性です。
5,6年前に、耳鼻科でメニエール病と診断されて、投薬(メリスロン、アデホス等)を受けておりますが、全く改善しないそうです。症状は、左耳の難聴、耳鳴り。それに、めまい時は、ぐるぐる回転性のめまいで、強い吐気を伴います。また、めまい発作の無い時でも、ふわふわ揺れた感じで、いつも船酔い状態だそうです。
令和3年6月18日、知人の紹介で、漢方治療を求め来院されました。
身長170.0cm、体重80.0kg、BMI27.7と肥満傾向です。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認めました。また、厚い白苔を認めました。
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう;症例51、648参照)5gと五苓散(ごれいさん;症例215参照)5gとコウジン末(;症例449参照)を合わせて処方したところ、7月14日に来られ、「めまいが全く起きなくなりました。」といわれました。

5,6年間も苦しめられためまいがあっさりと治ってしまいました。漢方がお役にたててよかったです。

メニエール病については、こちらメニエール病について | メディカルノート

768.小児心身症の漢方治療

症例は、8歳9ヶ月、女児です。
令和3年5月中旬より、頭の中がもやもやしたり、クラクラし、気持ちの悪い日が続いたため脳外科を受診しましたが、検査の結果、「異常なし。」といわれました。お腹も気持ち悪くなる時もあるそうです。
数日前からは、3回ほど視界が暗くなることがあり、今度は眼科を受診しましたが、やはり、「異常なし。」といわれました。
令和3年6月25日、知人の紹介で、赤穂市から漢方治療を求め来院されました。
身長127.2cm、体重26.0kg。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、白苔を認めました。水毒がメインで気虚もあると考えました。
他の症状として、肩こり、やる気が出ない、時々悲しくなる、不安になる、乗り物酔いする、寝汗をかくなどがあります。
お母さんもパニック症候群で、心療内科に通院されており、自分の娘も過呼吸になるのではないかと心配されておりました。
小建中湯(しょうけんちゅうとう;症例26参照)))10gと苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)5gを合わせて処方したところ、7月16日に来られ、お母さんが、「元気になりました。」といわれました。本人も、「どこも体調は悪くない。」といわれました。

漢方がお役にたててよかったです。

769.原因不明の疼痛の漢方治療

症例は、41歳男性です。
令和3年3月頃より、右の頸部や肩の痛みが続くため、整形外科を受診し、単純X線写真等の検査を受けましたが、「異常なし。」といわれています。
2,3日前からは、右大腿部の引きつったような痛みが出現し、6月23日、ホームページをみて、たつの市から漢方治療を求め来院されました。
また、以前より頭部に脂漏性皮膚炎があります。
身長180.0cm、体重70.0kg、BMI21.6。
この方の舌を見ると、辺縁が分厚く赤く(この赤みは肝の熱を表しています)、中央に黄色の苔を認め、気滞と考えられました。
他の症状として、寝付きが悪い・手の掌に汗をかく・耳鳴り・目がかすむ・鼻水などがあります。
治頭瘡一方(ちづそういっぽう;症例724,733参照)5gと四逆散(しぎゃくさん;症例63参照)5gを合わせて処方したところ、7月16日に来られ、「痛みはかなり改善されました。頭部の皮膚炎もきれいになりました。」といわれました。

漢方がお役にたててよかったです。

四逆散が適応する方には、緊張に伴う手掌の発汗があるという特徴があります。冷えやうつ熱なども含めて、手に触れるだけでも大事な情報が得られます(志馬 千佳;漢方と診療 Vol.6 No2 p8, 2015)。

四逆散による疼痛の治療はこちらの文献が参考になります。
慢性疼痛に対する四逆散加味方の治療経験(今井 美奈 他) 日東医誌

770.治療に難渋した左坐骨神経痛の漢方治療

症例は、81歳女性です。
約1年前から、立ちあがるとお尻から左足先にかけて痛みやしびれが走り、足腰を伸ばすことができなくなったため、整形外科を受診し、飲み薬や湿布、注射などの加療を受けましたが全く改善しなかったため、知人から勧められた整体を受診したところ、症状がかえって悪化したそうです。令和2年11月20日、知人の紹介で、加西市から漢方治療を求め来院されました。
身長156.0cm、体重46.0kg、BMI18.9。
この方の舌を見ると、色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、「お血」体質と考えられました。
他の症状として、冬にしもやけができる・動悸・首や肩こり、足が冷えるなどの症状があります。
疎経活血湯(そけいかっけつとう;症例1参照)5gと当帰四逆加呉茱萸生姜湯 (とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう;症例92参照5gにブシ末を足して処方したところ、12月15日に来られましたが、変化ありませんでした。そこで、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を十全大補湯(じゅうぜんたいほとう;症例69、509参照)に変えて処方しましたが、令和3年1月22日と2月24日に来院され、やはり効果ありませんでした。そこで、交感神経の異常な緊張による痛みの可能性を考え、十全大補湯を抑肝散に変え、眠前に牛車腎気丸(ごしゃじんきがん;症例47参照)を追加しましたが、3月16日に来院され、やはり無効でした。
どうしようかと困り果てましたが、平田ペインクリニックの平田道彦先生が、講演会で、十味剉散(じゅうみざさん)の話をされたのを思い出し、祈るような気持ちで、大防風湯桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照)にブシ末を足して1日2回投与したところ、4月20日に来られ、「少しずつ腰が伸ばせるようになりました。」といわれましたので、今度は2ヶ月分処方したところ、6月25日に来られ、「少しずつよくなっています。朝方に体操できるようになりました。」といわれました。さらに続けたところ、8月27日に来られ、「今まで、夜間の痛みのため、寝返りの度に目が醒めていたのが、上を向いて寝ても、横向きで寝ても痛くなくなりました。」と、劇的に改善されました。どんどんストレッチ体操やラジオ体操もされているそうです。

時間がかかりましたが、漢方がお役にたててよかったです。

日本赤十字社栃木県支部大田原赤十字病院 整形外科の吉田祐文先生は、腰下肢痛について、以下のように記載されています。
整形外科領域の日常診療の中でも腰下肢痛は肩こり・関節痛と並び扱うことが非常に多い疾患である。下肢痛をいわゆる坐骨神経痛と考えれば、その原因となる疾患は変形性脊椎症・椎間板症・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・分離症・辷り症などの変性疾患、圧迫骨折・破裂骨折・脱臼骨折などの外傷のように多岐にわたっている。
腰・下肢痛の原因には、腎虚・瘀血・水滞などが関与していると考えられ、牛車腎気丸・八味地黄丸・当帰四逆加呉茱萸生姜湯・芍薬甘草湯などの通常の頻用処方以外にも、十全大補湯・人参養栄湯といった気血双補剤もよく使用します。

十味剉散(じゅうみざさん)について(平田道彦先生;漢方スクエアより)

大防風湯と桂枝茯苓丸の併用は、十味剉散(じゅうみざさん)という方剤のエキス剤による模倣です。十味剉散は明の時代の方剤ですが、「足痛、日を経て、脛肉脱し、行歩艱難の者に効あり。(中略)この薬、また、血を益し、筋を養い、力を生ぜしむ」と説明されています。
「肉脱」とは、文字通り筋肉が無くなって痩せてしまっている状態のことで、何らかの原因で足の筋肉が痩せて、痛みが強く、力が入らず、歩けないものに使用すれば、筋肉が強くなり力が出る、というのです。
大防風湯・桂枝茯苓丸の併用は、十味剉散に比べ薬味が多くなりますが、考え様によっては本来の十味剉散より駆瘀血作用、袪風湿作用、補気作用が加味されて、多面的と言えます。

771.昼間のおもらしの漢方治療

症例は、7歳7ヶ月、男児です。
昼間のおもらしが続く(夜間は時々)ため、令和3年6月26日、漢方治療を求め来院されました。
身長124.4cm、体重21.0kg。
他の症状として、排便2日に1回、汗かきやすい(寝汗)、口の乾燥などがあります。
鼻血なし。食欲普通。
舌診では特に異常を認めず、 腹診では腹直筋緊張(;症例279参照)を認めました。
小建中湯(しょうけんちゅうとう;症例26、29、145、190、192、284参照)10gを1日2回で、一か月分処方したところ、7月29日に来られ、「回数が、ちょっと減りました。」といわれました。さらに続けたところ、8月30日に来られ、「この10日間、まったくおもらしありません。」といわれました。

漢方がお役にたててよかったです。

昼間のおもらしについては、こちらユニ・チャームーライフリー

772.舌痛症の漢方治療

次の症例は、77歳女性です。
令和2年の9月頃から、舌がヒリヒリと痛む(場所は1日のうちで変わる)ため、令和3年1月、口腔外科を受診しましたが、「異常なし。」といわれました。その後、飴やはちみつをなめたり、亜鉛も試しましたが変化がないため、3月19日、漢方治療を求めて当院を受診されました。
身長149cm、体重43kg、BMI19.4。
他の症状として、便秘(3日に1回)・寝つきが悪い・夢が多い・寒がり・目が疲れる・皮膚がカサカサするなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。
六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477、478、480、488参照)5gと、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ;症例34参照)7.5gを合わせて一ヶ月分処方しところ、4月14日に来られ、「午前中はましになりました。」といわれましたので、眠前に桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67、91、95参照)2.5gを追加したところ、5月13日に来られ、「ヒリヒリが気にならない時間が長くなりました。」といわれました。さらに続けたところ、7月13日に来られ、「夕食後にヒリヒリしますが、夜は痛みません。」といわれました。9月15日には、「痛まない日がずいぶん増えてきました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

773.非結核性抗酸菌症の漢方治療(8)

次の症例は69歳、女性です。
4年前の65歳の時に非結核性抗酸菌症(肺MAC症)と診断され、クラリスロマイシン(CAM)リファンピシン(RFP)エタンブトール(EB)を2年間飲み、菌は陰性化したそうです。しかし、今回再発し、また同じ治療を勧められましたが、前回の治療で体重が6‐7Kg減り、体力が低下したため、治療を受けるか迷っていたところ、当院に同じ病気で通院中の患者さんの紹介で、令和3年8月26日来院されました。身長156.0cm、体重54.0kg、BMI22.1
現在の症状は、夜間中心の咳と時々血痰が出るそうです。他の症状として、疲れやすい・寝つきが悪い・首から上の発汗・顔ののぼせ・めまい・肩こり・足が冷えるなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、328、370、407、410、413、425、442、449、465、476、511、512、551、583、604、625、648、655、748参照)5gと加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210参照))4gとコウジン末(;症例449参照)を合わせて1日2回処方したところ、9月24日に来られ、「夜間に出ていた咳が止まりました。血痰も一度も出ませんでした。」といわれました。10月22日には、「体重が1Kg増えました。体もホカホカします。」といわれました。ただ、「夜間少し咳があるのと、少量の血痰が5日ほどあった。」といわれましたので、加味逍遥散を滋陰至宝湯(じいんしほうとう;症例280,494,638参照)へ変更しました。
11月19日には、「先月受けた住民健診の、胸部レントゲンで、異常なしとなっていました。」といわれました。陰影が消えたようです。食欲も引き続き良好とのことでした。

最近の経過ですが、令和4年5月9日に来られ、「咳なし、血痰なし。食欲は食べ過ぎて困るほどです。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

774.起立性調節障害の漢方治療

次の症例は13歳10ヶ月、女児です。
昨年の秋ころから、授業中に寝てしまうことがあり、総合病院の睡眠外来を受診したところ、「特発性過眠症」と診断され、モディオダール(精神刺激薬;ナルコレプシーの治療薬)を処方されたがよくならなかったそうです。
また、令和3年2月初めから、起床時に頭痛・腹痛を訴え、同じ総合病院の小児科を受診したところ、「起立性調節障害」と診断され、ミドリンを処方されましたが、やはりよくならなかったそうです。
2月、3月はほとんど登校できず、放課後の部活(ギターマンドリン部)のみ参加できたそうです。
4月からは、午後から少し登校できるようになりましたが、頭痛は続いたそうです。
ホームページをみて、令和3年5月8日来院されました。身長161.0cm、体重53.0kg、BMI20.5。
他の症状として、アレルギー性鼻炎(ハウスダスト・スギ・ヒノキ)疲れやすい・寝つきが悪い・下痢・立ちくらみなどがあります。この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、328、370、407、410、413、425、442、449、465、476、511、512、551、583、604、625、648、655、748参照)5gと苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)5gとコウジン末(;症例449参照)を合わせて処方したところ、6月7日に来られ、「5時間目の授業から出ています。」といわれました。そのまま続けていただいたところ、7月3日に来られ、「3時間目から出れるようになりました。期末試験は受けることができました。」といわれました。7月28日に来られた時は夏休みでした。
次に、8月30日に来られ、「8月25日から2学期が始まりました。時々腹痛があります。」といわれました。
次に、10月1日に来られ、「週に2,3日は朝から出席できています。」といわれました。
10月29日に来られ、「腹痛がまだあります。」といわれました。腹診で、胸脇苦満(=胸から脇(季肋下)にかけて充満した状態があり、押さえると抵抗と圧痛を訴える状態)と腹直筋攣急があり、腹に2本の棒を立てたように触れましたので、四逆散(しぎゃくさん;症例63参照)2.5gを寝る前に追加したところ、12月2日に来られた時には、「毎日朝から学校に行けてます。腹痛もありません。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

775.掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の漢方治療

次の症例は72歳、女性です。
40年くらい前より、掌蹠膿疱症を発症していたようですが、その時は病院でもわからず、手や足の皮膚に水泡ができて、皮膚が乾燥し、皮がめくれたり、かゆみがあったそうです。51歳ころより、その症状がひどくなり、大阪の病院ではじめて掌蹠膿疱症と診断され、ビオチン(ビオチンについてはこちらをクリック友仁病院)を処方されたそうです。それを今まで続けて来られましたが完全に治ることはありませんでした。そんな時、当院通院中の方の勧めで、姫路市より、令和3年11月24日来院されました。
身長149cm、体重56kg、BMI25.2と軽度肥満を認めます。
他の症状として、寝つきが悪い・髪の毛が抜けやすいなどがあります。
掌蹠膿疱症の病名がついておりますので、桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)を4g/分2で一か月分処方したところ、12月15日来られ、診察室に、「先生ありがとう。きれいになりました。」といいながら、笑顔で入ってこられました。
手足をみせていただくと、本当にきれいになっておりました。
今まで、掌蹠膿疱症にいいと言われていることは何でもやって来られ、例えばある整体の先生から、「2年通えば、治してあげる。」といわれ、2年通ったそうですが全くよくならず、そんなこんなで今まで何百万円というお金を使われてきたそうです。
それが1か月足らず治ったものですから、「もっと早く来ればよかった。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。
掌蹠膿疱症については、症例33、323も参照ください。

桂枝加黄耆湯について

桂枝加黄耆湯は、体の熱や腫れ、あるいは痛みを発散して治します。また、汗を調節し、皮膚の状態をよくする作用もあるといわれます。具体的には、寝汗やあせも、あるいはカゼのひき始めなどに使用します。
山梨市の雨宮修二先生が、「漢方研究」という雑誌の2009年10月号に、「掌蹠膿疱症に対して使用したところ、有効率83.6%であった。」と、報告されておられますので、当院では全例に本剤を使用しております。有効率はほぼ100%です。

776.咽喉頭異常感症の漢方治療

次の症例は69歳、女性です。
令和3年9月8日から喉の違和感が出現し、一般の薬局に勧められ半夏厚朴湯を飲みましたが無効でした。
そこで、総合病院の耳鼻咽喉科を受診し、MRIの検査まで受けられましたが、結果は異常なしでした。また内科で胃内視鏡も受けられましたが、それも異常ありませんでした。ネットで調べたら、咽喉頭異常感症の症状に似ているので、9月27日、漢方治療を求めて来院されました。
身長147cm、体重38kg、BMI17.6。
他の症状として、やる気が出ない・不安になる・沈みがち・ぐっと耐えることが多い・心配事が多い・食欲がない・途中で目が覚める・寝汗をかく・のどが渇く・めまい・息切れ・動悸などがあります。
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440、463、515、542、550、555、558、565、577、585、594、599、602、603、626、638、657、663、666、677、738、741、756、757参照)コウジン末(;症例449参照)を合わせて1日2回処方したところ、10月25日に来られ、「楽になりました。動悸もなく、食欲も戻りました。」といわれました。
次に、11月24日に来られ、「調子いいです。雑穀米を食べています。毎日30分歩いています。」と、いわれました。
次に、12月23日に来られ、「今バラ色の人生です。周りから明かるくなったね、といわれます。人と話すのが苦手でしたが、今では誰かと話をしたくて仕方ありません。食事を普通に食べられるありがたみをひしひしと感じております。」といわれました。また、「これまで薬を飲むのがいやでしたが、今では漢方がとてもおいしく、待ち遠しいくらいになりました。先生のおかげです。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。
なお、余談ですが、この茯苓飲合半夏厚朴湯を全国で一番多く処方しているのは当院だそうです。当院を回っているMRさんに教えていただきました。

咽喉頭異常感症についてはこちらをクリック元住吉こころみクリニック

なお、このサイトでは、治療として、症状が軽いときや、からだの要素が強いときには漢方薬を用いることもあるが、主に抗うつ剤・抗不安薬(精神安定剤)・睡眠薬で治療するように書かれています。
しかし、本症例をみればわかりますが、
もちろんこれらの西洋薬は飲む必要はありません。漢方だけの方が早く確実に治せますので、一言付け加えておきます。そのために本症例を載せました。

777.夜間睡眠中の無意識の嘔吐の漢方治療

次の症例は80歳、男性です。
食事がのどに詰まる、げっぷの回数が多く、反芻する。そして、毎日、夜間睡眠中に無意識に嘔吐しシーツを汚すため、令和3年9月7日、漢方治療を求めて来院されました。
身長163cm、体重63kg、BMI23.7。他院で、ビオフェルミン・ビフィズス製剤・酸化マグネシウム・エビリファイ・リスパダール・アマリールを内服されております。
他の症状として、食後の眠気・みぞおちが痞える・鼻水などがあります。
この方の舌を見ると、白い苔がつき、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440、463、515、542、550、555、558、565、577、585、594、599、602、603、626、638、657、663、666、677、738、741、756、757参照)を1日3回処方したところ、9月21日に来られ、「もともと下痢があり、そちらの薬も欲しい。」といわれましたので、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう;症例163、671参照)を合わせ1日2回処方したところ、10月19日に奥さんと一緒に来られ、「夜中全く嘔吐しなくなりました。また下痢もありません。」と奥さんがいわれました。また、毎日シーツの洗濯が大変であったようで、奥さんから、本当に助かっていますと大変感謝されました。

漢方がお役に立ててよかったです。

778.犬の免疫介在性溶血性貧血の漢方治療

次の症例は8歳、うちの愛犬のケンタ君です。オスのミニチュアシュナウザーです。
今まで健康で、何一つ病気もせず健康でした。体重14㎏です。
令和4年3月25日、フィラリアの薬をもらいに獣医さんのところに行った時に採血しましたが、異常はありませんでした。
赤血球数8.59M/μL(正常値5.65-8.87)
ヘマトクリット値56%(正常値37.3-61.7)
ヘモグロビン値19.2(正常値13.1-20.5)でした。

ところが、
●令和4年5月5日(木)、朝いつものように散歩行きましたが、元気がない感じがしました。食欲もなく、夕食少し食べただけでした。
●5月6日(金)、食欲全くなし。何も食べない、元気なし。散歩家のまわりだけ。
●5月7日(土)、状態変わらず、夕方獣医さんを受診し、重度の貧血があり、検査の結果、クームステスト陽性から溶結性貧血と診断されました(人間でも難病に指定されている厄介な病気です)。
2日半ほど何も食べていないので、体重は2Kg減っていました。
クームステスト…赤血球細胞膜に結合している免疫グロブリン(抗体)が存在しているか否かを調べる試験である。免疫グロブリンが赤血球に結合している場合、これに抗免疫グロブリン抗体を加えると、免疫グロブリンと抗免疫グロブリン抗体が結合し、抗原抗体反応が起きる。この結果、赤血球は凝集する。凝集が起きた場合をクームス試験陽性と言う(ウィキペディアより)。つまり、赤血球に対する自己抗体があると、クームステスト陽性となり、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)と診断する大きな助けとなります。
赤血球数1.87M/μL(正常値5.65-8.87)
ヘマトクリット値16.9%(正常値37.3-61.7)
 18%以下では重度の貧血、18~29%では中等度の貧血、30~36%では軽度の貧血と評価されます。
ヘモグロビン値6.0(正常値13.1-20.5)でした。
超音波検査で、脾臓が腫れているとのことでした。ステロイドを注射で投与されました。
●5月8日(日)再診、採血の結果、昨日よりさらに貧血進行。入院して、輸血をして、ステロイドと免疫抑制剤を使うという治療方針を聞きましたが、ケンタ君は怖がりで寂しがり屋なので、入院はとても無理です。同じだめなら家で死なせてあげようと考え、ステロイドと吐き気止めだけを注射で投与していただき帰宅しました。ステロイド内服(15㎎×2回/日)と胃薬も処方されましたがとても飲めるような状態ではありませんでした。食欲は引き続きありませんでしたが、午後から家内が作った野菜スープを2杯飲んでから、少しずつ食べるようになりました。
●5月9日(月)、朝便1回。 今日は食欲ありません。夕は庭で排便。だめもとで漢方を使ってみようと考え、クラシエKB-48十全大補湯(じゅうぜんたいほとう;症例15、69、701参照)(以下十全)3.75gを20ccの注射器で、少量の熱湯で溶いた0.5包を注腸しました(方法は症例3参照、ニプロネラトンカテーテル14Fr.の先10cm位使用)。その後しばらくしてから、なんと食事を食べるようになりました。漢方が効いているという感触がありました。
本剤を選んだのは、病名漢方治療の実際(メディカルユーコン 坂東正造著)に貧血症のbase薬として書いてあったからです。さらに人参湯を足すようにとも書いてありました。
十全大補湯は、骨髄の造血能を高め、人参には、血色素、赤血球を増加させる作用がある。また乾姜、白朮がこの作用を助けるとありました。

●5月10日(火)、朝 排便なし。十全1包注腸。食欲OK。夕軟便1回 。十全1.5包注腸。食欲OK。
●5月11日(水)、朝軟便2回 十全1包+ツムラ人参湯2.5g1包注腸。食欲OK。夕軟便1回 十全1包+人参湯1包注腸。食欲OK。病気になってから、褐色色の尿でしたが、漢方を使いだしてからそれがだんだん薄くなってきて、この時点で完全に透明になったのをテッシュにとり確認しました。溶血がストップしたようです。
●5月12日(木)、朝水様便2回。十全1包+半夏瀉心湯(下痢に使用)1包注腸。食欲OK 尿透明。夕軟便1回、朝よりは便は固まってきました。十全1包+半夏瀉心湯1包注腸。食欲OK。
●5月13日(金)、朝 水様便1回、昨日よりは固まっている。しかし、尿は黄色い。溶血が再開したようです。散歩も昨日より距離短め。便には、半夏瀉心湯のほうがよさそうだが、溶血を考え、人参湯へ戻しました。十全1包+人参湯1包注腸。夜庭で、水様便2回。散歩せず。食欲あまりない。夜は食パンを食べる。
●5月14日(土)夜中に1回嘔吐。食べ物が消化されていない感じ。嘔吐後、しばらくしてカステラ1切れとさつまいも食べる。朝、排便なし。尿はうす黄色へと改善。やはり、十全と人参湯がいいようです。十全1包+人参湯1包注腸。本日は食欲良好。夕、排便1回いい形の便が出た。散歩も軽やかに歩く。漢方入れるタイミング逃し、夜は漢方を入れませんでした。
●5月15日(日)、朝 普通便2回 散歩45分歩く(元気な時と同じ)。尿透明。午前中食欲なし。昼前、嘔吐2回(昨夜漢方を入れなかったのが原因と考えました)。あわてて十全1包+半夏瀉心湯1包入れる。2時間くらいしてから、食欲旺盛になる。夕 水様便2回。尿透明。食欲旺盛。十全1包+人参湯1包注腸。
●5月16日(月)、朝 普通便2回 散歩元気な時と同じスピードで歩けた。十全1包+人参湯1包 食欲OK 尿透明。夕 軟便2回 散歩元気な時と同じスピードで歩けた。十全1包+人参湯1包注腸。食欲OK 尿透明。
ほぼ、元気な時の状態に戻りました。
●5月17日(火)の夕から食事に漢方振りかけても食べてくれるようになりましたので、注腸は終了。以後経口としました。
●5月19日(木)、元気すぎて庭を走り回っています。食欲も旺盛で食べまくっています。

再発も多いとのことですので、当分の間漢方は飲ませ続ける予定です(幸い喜んで食べてくれていますので)。

今回の症例はまちがいなく当院No1の著効例でした(人間ではありませんでしたが‥)。本当に漢方をやっていてよかったです。感謝です。

ちなみにお兄ちゃんのタロウは高齢ながら、元気にやっております。

1.犬の溶結性貧血についてはこちらをクリック子犬のへや
2.こちらもクリック動物再生医療センター病院

【免疫介在性溶血性貧血の治療法(上記HP2より抜粋)】

お薬で免疫機能を調節することで赤血球の破壊を食い止めます。一般的にはステロイドが使用されることが多いですが、症状の強さによりシクロスポリンなど免疫抑制剤を合わせて使用することもあります。貧血が重度の場合には輸血や、呼吸を楽にするために酸素室にて治療を行うことがあります。お薬での治療で十分な効果が得られない場合には、赤血球が破壊される場所の一つである脾臓を手術で摘出することもあります。
残念なことに、ワンちゃんにおける急性のIMHAでは死亡率が高く(30~80%)、出来るだけ早期に適切な治療を開始してあげることが重要になります。
急性期が過ぎ、比較的容体が落ち着いている場合でも治療には数ヶ月かかる(漢方で1週間で治ったのは奇跡に近いことだと思います)ことが多く、いったん完治した場合でも再発することが多いとされています。

【犬の溶血性貧血の主症状(上記HP1より抜粋)】

  • ぐったりして元気がない
  • 運動を嫌がる
  • 食欲不振
  • 呼吸困難
  • 口内粘膜が蒼白
  • 肝臓や脾臓が腫れる
  • 黄疸(白目や口内粘膜が黄色)

尿の色が濃くなる(赤茶色に近くなる)  すべてケンタ君に該当しておりました。

779.原因不明の手足のしびれの漢方治療

次の症例は46歳、男性です。
令和4年2月頃より、手足のしびれ(特に足)が出現。運動したり、睡眠をとったりしたら解消しますが、30分程度座った状態でまたしびれが出てくるそうです。4月6日、漢方治療を求めて姫路市から来院されました。
身長175cm、体重57kg、BMI18.6。
他の症状として、肩こりがあります。
舌は、辺縁が分厚く赤く(この赤みは肝の熱を表しています)、中央に白色の苔がありました(気滞)。腹診では、みぞおちが硬くなっており(心下痞硬という)、胸脇苦満(=胸から脇(季肋下)にかけて充満した状態があり、押さえると抵抗と圧痛を訴える状態)と腹直筋攣急もあり、腹に2本の棒を立てたように触れました。
四逆散(しぎゃくさん;症例63参照を5g/日で処方したところ、5月6日に来られ、「四逆散がよく効いています。日常生活が普通に送れるようになりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

780.感情のコントロールができないの漢方治療

次の症例は44歳、女性です。
既往歴:25歳時に社会不安障害
30歳時にうつ病で休職し、35歳まで心療内科で投薬を受けた(出産のため薬中止)。
41歳の時、2人目出産後、薬再開した(昨年7月まで投薬されていた)。
喉の痞えがあり、近くの内科で、半夏厚朴湯と当帰芍薬散が処方され調子よかったが、お盆明けからダウンしてしまった。
下の子供にキレてしまい、自分をコントロールできなくなり(後で自己嫌悪に陥る)、どうにかしたくて、令和3年8月31日、漢方治療を求めて姫路市から来院されました。
身長168cm、体重49kg、BMI17.4。
他の症状として、頭痛・いらいら・些細なことが気になる・気分が落ち込む・食欲がない・寝つきが悪い・肩こり・動悸などがあります。便秘にマグミット内服中。
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440、463、515、542、550、555、558、565、577、585、594、599、602、603、626、638、657、663、666、677、738、741、756、757参照)5g加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210参照))5gコウジン末(;症例449参照)を合わせて1日2回処方したところ、9月6日に電話があり、「薬を飲み始めて、数日で劇的に症状がよくなりました。」と電話がありました。
9月24日に来られ、「引き続き調子いいです。」といわれました。
10月20日に来られた時には、「ほぼすべての症状がとれました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

781.過換気症候群の漢方治療

次の症例は14歳、女性です。
お母さんが詳しく経過を書いて下さいましたので、そのまま転記いたします。
小学校6年生の春から、過換気症候群を何度か起こし、そのたびに意識を失うような状態が数秒繰り返されたそうです。
この病気のため、何度か学校から総合病院へ救急搬送され、そこで色々な検査を受けられたようです。発作時に腹痛症状があることが多かったので、腹部超音波検査や腹部CT検査をされましたが、異常なしでした。
心電図も異常ありませんでしたが、心臓の超音波検査やCT検査の結果、右冠状動脈の走行に異常があることが見つかり、岡山大学病院に紹介された結果、今のところ虚血がないため経過観察し、高校生になってから、手術を受けることを検討されているようです。
小児循環器科の主治医は、この血管の問題と過換気との因果関係について、「あるとも言えず、ないとも言えない。」といわれたそうです。
精神的な不安や日常の疲れが出たときに発症することが多いので、神戸の病院でカウンセリングを受けることも考えられておりました。知人の紹介で、赤穂市より、令和4年4月18日来院されました。身長160.0cm、体重47.0kg、BMI18.4。
他の症状として、疲れやすい・些細なことが気になる・口唇が荒れる・目の下にクマができる・立ちくらみ・腹がなる・皮膚がかさかさするなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もありました。
腹診では、腹皮拘急と臍上悸がみられました。桂枝加竜骨牡蠣湯5g(けいしかりゅうこつぼれいとう;症例57、224、286、451、507参照)苓桂朮甘湯5g(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)を1日2回で、小建中湯(しょうけんちゅうとう;症例26、29、145、190、192、284参照)2.5gを眠前に1回を合わせて一ヶ月分処方したところ、5月24日に来られ、お母さんが、「漢方を飲みだしてから、一度も発作ありませんでした。シャトルランをしたら必ず発作を起こしていましたが、今日やっても全然大丈夫でした。奇跡です。」といわれました。「元気にシャトルランしている娘をみて、うれしくて涙がこぼれてきました。もうすぐ修学旅行ですがこれで安心です。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。過換気症候群については症例757も参照ください。

過換気症候群についてはこちらをクリック済生会

782.コロナワクチン接種後の体調不良の漢方治療

次の症例は13歳、女性です。
令和4年5月17日、コロナワクチン接種後から、発熱・頭痛・下痢が出現し、その後だるさと頭痛が続き学校にいけなくなりました。近医を受診し採血を受けましたが、異常はありませんでした。そこで神戸市の病院に紹介されましたが、やはり異常は見られず、カロナールやロキソニンが処方されただけでした。
頭痛は、側頭部を中心に生理中に特にひどく痛むそうです。生理痛はもともとひどかったそうです。
6月28日、知人の紹介で、赤穂市より、漢方治療を求めて来院されました。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もかなり強くありました。
他の症状として、疲れやすいがあります。食欲はありましたが、聞くとふだん甘いものばかり食べる傾向がありました。補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、328、370、407、410、413、425、442、449、465、476、511、512、551、583、604、625、648、655、748、774参照)5gと川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)5gを合わせて一ヶ月分処方したところ、7月23日に来られ、「飲んで1週間したら元気になり。学校に行けるようになりました。頭痛はまったくありません。」といわれました。
漢方がお役に立ててよかったです。

総合相模更生病院 産婦人科の山本伸一先生は、月経痛を訴える人は、果物や菓子類など甘いものとりすぎの方が多いといわれています。

なお頭痛に対して、川芎茶調散を選択したのは、日高徳洲会病院の井齊先生が、月経がらみの頭痛には川芎茶調散がよいと教えていただいたからです。

783. 緑内障の漢方治療

次の症例は80歳、女性です。
「神戸市の総合病院眼科で、緑内障の手術を受けたが、眼圧が下がらない。」と、令和4年4月1日、知人の紹介で、姫路市より、漢方治療を求めて来院されました。現在、週1回、神戸まで通院されているそうです。目が疲れる・目がかすむ・見えにくいなどの症状があります。
「このまま、眼圧が下がらなかったら、どうなるのか?」と尋ねたら、「あともう1回手術ができるが、それでもだめなら失明する。」といわれているそうです。
緑内障の漢方治療は今まで経験ありませんでしたので、坂東正造先生の『病名漢方治療の実際』の緑内障のところを見ると、越婢加朮湯が第一選択薬で、副作用で飲めないようなら五苓散と書いてありましたので、欲張って両者を併用して1日2回で処方いたしました。
5月24日に来られましたが、特に変化なしでした。やはり漢方では無理かなと思っていたところ、7月2日に来られ、眼圧が少し下がったため、今まで毎週通院していたのが、「1ヶ月先でよい。」といわれたそうです。次に8月3日に来られたときには、「眼圧が9-11mmHg(正常10-21mmHg)と完全に正常になりました。」といわれました。そのため、1ヶ月毎の通院が2ヶ月に1回でよくなったそうです。漢方薬を最初はあまりきちんと飲まれていませんでしたが、今回は1回も忘れずに飲まれたそうです(血圧の薬はしょっちゅう忘れますが…と笑っておられました)。

その後の経過ですが、令和5年1月27日に来られた時に、「昨年12月10日、眼科受診した時に、両目ともに眼圧が10mmHgとずっと調子いいため、長年処方されてきた点眼剤がすべて中止になりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

越婢加朮湯は、麻黄・石膏・白朮に利水作用があり、過剰な房水を利尿してやることで、眼圧を下げる効能があるそうです。

緑内障についてはこちらをクリック 緑内障 – 目の病気百科|参天製薬 (santen.co.jp)

784. 手根管症候群の漢方治療

次の症例は73歳、男性です。
令和3年3月に近くの整形外科で、手根管症候群と診断を受け治療をされている患者さんです。
セレコックス、ムコスタ、メチコバール、ノイロトロピンが処方されておりました。
しかし、小指以外がビリビリとしびれ、特に夜間に強いため、夜も眠れない状態でした。
令和4年6月20日、知人の紹介で、たつの市より、漢方治療を求めて来院されました。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もかなり強くありました。
クラシエ桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)5gと 桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67、91、95参照)5gを合わせて1日2回処方したところ、7月19日に来られ、「夜に辛かったビリビリがなくなりました。」といわれましたので、あまり効いてない整形外科からの薬をやめるようにと話しました。
8月12日に来られた時も、「しびれ、痛みないです。」といわれました。
この2剤を選んだのは、福岡の平田道彦先生が、腱鞘炎の病態は、水毒と瘀血といわれていたからです。

漢方がお役に立ててよかったです。

手根管症候群は、手首の掌側にある骨と靭帯に囲まれた手根管を通っている神経が慢性的に圧迫を受けて、痛みやしびれ、運動機能の障害を受けている状態です。

手根管症候群についてはこちらをクリックNHK健康チャンネル

 

785. 肩こり関連めまいの漢方治療

症例① 症例は42歳、女性です。
令和4年3月26日、疲れやすい・めまい・体が重い・乗り物酔いしやすい・寝つきが悪い・寝汗掌に汗をかく・寒がり・胸やけ・腹がはるなどを訴え赤穂市よりHPをみて来院されました。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質認めました。身長156cm、体重45kg、BMI18.5とやせ気味の方です。
茯苓飲合半夏厚朴湯と抑肝散加陳皮半夏とコウジン末でそこそこよかったのですが、7月14日に来院されたときに、肩こり・首こり・頭痛・めまいを訴えられ、血圧が96/56と低かったので、典型的な肩こり関連めまいと診断し、桂枝加苓朮附湯を追加したところ、8月4日に来られ、「桂枝加苓朮附湯とてもよく効いています。」といわれました。

症例② 症例は53歳女性です。それまでは六君子湯、コウジン末、五苓散を1日2回で、桂枝茯苓丸加薏苡仁を1回眠前で加療していた患者さんです。
令和4年8月5日、めまい、肩こり、頭痛を訴えられ、血圧が112/66でしたので、五苓散をクラシエの桂枝加苓朮附湯に変更したところ、10月1日に来られ、「めちゃくちゃ体調いいです。」と、大変喜んでいただきました。

症例③ 症例は55歳、女性です。この方もそれまで六君子湯と八味地黄丸で加療していた患者さんです。令和4年8月26日、めまい(眼科でアデホスもらっている)、肩こりを訴えられ、普段低血圧とのことでしたので、クラシエの桂枝加苓朮附湯を1日2回で処方したところ、10月1日に来られ、「肩こりもなく、めちゃくちゃ効いています。」と、大変喜んでいただきました。

肩こり関連めまいに関しては、埼玉県の竹越耳鼻咽喉科の竹越哲男先生に教えていただきました。
特徴は
①8割女性…女性は筋肉量が少ないので、肩こり・首こりを起こす
②低血圧→脳循環不全を起こす
③肩こり・首こり・頭痛
④交感神経過緊張→血管収縮→脳循環不全

これに、クラシエの桂枝加朮附湯を使えば、有効率87%というものでしたが、たくさん追試させていただきましたが、1例を除いてすべて劇的に効いております。

漢方がお役に立ててよかったです。

786. 体のあちこちの痛みの漢方治療

次の症例は61歳、女性です。
手指、膝、首、腰などが痛く、整形外科では頸椎ヘルニア、腰椎ヘルニア、左胸郭出口症候群などの病名がついています。
また、両下肢のしびれや痛みもあります。10年前には、右第3指ばね指の手術をされております。
また、5・6年前からへバーデン結節・ブシャール結節もあります。
令和4年10月7日、当院HPをみて姫路市より、漢方治療を求めて来院されました。
この方の舌を見ると、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もかなり強くありました。
他の症状として、疲れやすい・イライラ・体が重い・首から上に汗をかきやすい・熱がりの寒がり・目がかすむ・耳鳴り・痰・髪の毛が抜けやすいなどがあります。疎経活血湯(そけいかっけつとう)5gと薏苡仁湯(よくいにんとう)5gを1日2回と、補中益気湯2.5gを1日1回眠前に投与したところ、11月4日に来られ、「1日漢方飲んだら、うそのようにすべての痛みがとれてしまいました。痛みのない生活がこんなに楽とは。」といわれました。
「友人など他の方にも漢方薬をすすめます。」といわれました。

何年も苦しんだ痛みが1日でとれ、本当に奇跡的な症例でした。

漢方がお役に立ててよかったです。

787. 慢性腎臓病の漢方治療

次の症例は66歳、男性です。(当院職員のご主人)
もともと八味地黄丸と補中益気湯を飲まれていました。令和4年8月30日に採血をしたところ、クレアチニン1.46、eGFR38.7と腎機能障害を認めました。総合病院の腎臓内科で診ていただきましたが、原因となるようなものは見当たらず、経過観察となりました。
そこで、防己黄耆湯に牛車腎気丸を足して、1日3回投与したところ、11月12日の採血で、クレアチニン1.23、eGFR46.5と改善を認めました。
今後は黄耆末1gを1日3回追加して、腎機能の経過を見ていく予定です。
なお、腎機能改善に上記2方剤を使うというのは、むらかみ内科クリニックの村上和憲先生に教えていただきました。

慢性腎臓病についてはこちらをクリック 東京女子医大

788. 耳管開放症の漢方治療

症例409(当院の漢方著効例9)、510、535(当院の漢方著効例11)、751に引き続き、耳管開放症と思われる症例です。
症例は、61歳女性です。
令和4年1月25日に初診で姫路市から来られました。身長154.0cm、体重49.0kg、BMI20.7。
それまでは、神戸の漢方内科に通われていたようですが、コロナで通院が難しくなり当院へ来られました。
それまで、桂枝加竜骨牡蛎湯を飲まれていましたが、あまり調子がよくないようでしたので、処方を茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)と桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)を1日2回、加味逍遥散(かみしょうようさん)を寝る前に1回に変えました。それで結構よくなられましたが、5月2日に来られた時に、「左耳が塞がった感じがする」といわれましたので、加味逍遥散を加味帰脾湯(かみきひとう;症例45、193、239、291、308、409、510,535参照)に変更しましたが、耳の違和感、めまい(ふわふわ感)が続くため、耳鼻科を受診したところ、やはり、左の耳管開放症と診断されましたが、そこからがひどく、「これは自律神経失調症からくるものなので当院では治せません。リラックスしてゆったりとして下さい。」とだけいわれたそうです。そこで、11月4日から加味帰脾湯を1日2回に増やし、桂枝加苓朮附湯を1回にしたところ、12月10日に来られ、「ほとんどよくなりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

789.痰がのどにへばりついてとれないの漢方治療

次の症例は35歳、女性です。痰がのどにへばりついて取れないと、令和4年4月30日に初診で来られました。
切実な訴えはメモに書いて来られました。(持参されたメモは、こちらをクリック。)
書き出すと、4年前から、
1.年に何回も風邪をひき、咳と痰が何ヶ月も続く。
2.大量の痰(ねばねば・粘性)がたまり、数分おきに出る。(特に緊張・ストレスを感じると)
3.大量の痰が胸でゴロゴロし、呼吸ができなくなり、反射で咳が出て痰が出る。
4.常に気管支や肺がムズムズし、咳をしたい。
5.痰が喉に張り付いた感じがする。
6.咳払いをして痰をとらないと話ができない。
7.呼吸がしづらく浅い。
8.HSP/HSC(視線空気などにしてよりも敏感)、赤面症

そして、内科・耳鼻科・呼吸器内科でレントゲンや血液検査を受けられましたが、「異常なし。」と言われています。
また、「すべての薬を出し切った。」と、2件の先生にいわれたそうです。
身長163.0cm、体重54.0kg、BMI20.3。
その他の症状として、疲れやすい・手足の冷え・目が疲れる・体がむくむ・胃からチャプチャプ音がする(胃内停水音)・しみ・体にあざができやすい・朝が苦手などがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もありました。六君子湯5gと半夏厚朴湯6gを1日2回で処方したところ、5月28日に来られ、最初には症状に出てませんでしたが、「不眠と動悸がなくなりました。」といわれました。桂枝茯苓丸加薏苡仁を眠前に追加したところ、6月25日に来られ、「痰がなくなりました。咳が少しだけあります。サメ肌がよくなり、つるつるになりました。」といわれました。8月6日には、「咳、痰、鼻閉があります。」といわれましたので、半夏厚朴湯に変えて、辛夷清肺湯に変えましたが、9月8日には、「コロナにかかりました。」といわれました。10月1日には、「仕事場に行くと咳、痰が出ます。」といわれましたので、やはりストレスがメインと考え、辛夷清肺湯を滋陰至宝湯(じいんしほうとう;症例280,494,638、773参照)に変えたところ、11月に来られ、「滋陰至宝湯に変えて、1日で咳、痰がなくなりました。」といわれました。
治療に難渋しましたが、結局は、”肝咳”の症例とわかりました。やはり、「西洋医学が歯がたたない咳は腎咳と肝咳だ。」と下田先生が言われた通りでした。もっと早く気付くべきでした。

漢方がお役に立ててよかったです。

症例280にも書きましたが、肝咳についての下田先生のコメントです。

私のところに来るのはとにかく肺咳や腎咳が多いです。肝咳はやはり少ないですが、心や脾の咳というのはほとんどありません。
肝咳というのはストレスに伴う発作です。
子供がお母さんに叱られたとたんに発作を起こしたり、ご夫婦が夫婦喧嘩をして、夫から「おまえなんか死んでしまえ。」等いわれて大発作を起こしたり、配偶者に死なれてしまい、その後、突然咳が出だした等。
これも腎咳同様、西洋医学では治療が非常に難しいのです。
肝咳は、西洋医学でも心療内科的診断のできる医者はトランキライザー等を使って治療できますが、普通の治療ではダメです。

中医学最古の古典である黄帝内経には”五臓六腑,全て咳を生じる。肺のみに非ず”という下(くだ)りがあります。咳をしている人を診たときには、肺がどういう状態にあるのかを分析しないといけませんが、それ以外の臓器との関連性もみながら治療していく必要があります。

790.痒疹の漢方治療

次の症例は12歳、女性です。令和4年12月19日に姫路市から来院されました。
お母さんが経過を詳しく書いておられますので、そのまま記載します。
『1年半ぐらい前から、体中にかゆい湿疹ができ、痒くて掻くと汁が出ます。複数の水疱がかたまって5mm以上の盛り上がった皮疹になります。
何軒か皮膚科や内科に行きましたが、「なかなか治らない病気で、掻くからひどくなる。」といわれ、ステロイドと抗アレルギー薬を処方されるも一向によくならず増え続けています。年頃もあり、見た目にもわかる盛り上がりに、友達にも言われたり、自分でも体を見て落ち込み、学校にも行くのも嫌だという日もあります。色々と調べて、こちらで何か良い方向に向かえばありがたいと思い受診させていただきました。痒疹と診断されています。』
『とにかくこの湿疹を治したい。きれいな肌に戻りたい。中学入学までに…。』と切実な訴えでした。
身長150.0cm、体重40.0kg、BMI17.8。
その他の症状として、寒がり・口の中が乾燥する・腹痛(特に原因もなく)などがあります。
この方の舌を見ると、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質がはっきりしていました。柴胡清肝湯5gと桂枝茯苓丸加薏苡仁5gを1日2回で投与したところ、令和5年1月16日に来られ、皮疹はすべてきれいに消失しており、こちらがびっくりしたくらいでした。お母さんは、「元のように娘が明るくなり、よくしゃべるようになりました。」といわれました。
私としてはこちらの方がうれしかったです。

漢方がお役に立ててよかったです。

791.非結核性抗酸菌症の漢方治療(9)

次の症例は84歳、女性です。肺マック症で、令和元年から、リファンピシン・エサンブトール・クラリスロマイシンをずっと内服されており、今回主治医の先生から、「失明したら困るので、一度眼科にいってもらえますか。(エサンブトールの副作用で視力障害あり)」といわれ、不安になり、小野市から当院を受診されました。とにかく体調が悪く、だるい・心配事が多い・口の中が乾燥する・口が苦い・鼻水・咳・痰・胸やけ・息切れ・髪の毛が抜ける・食事がおいしくない・手足が冷えるなどの症状があります。身長157.0cm、体重37.0kg、BMI15とやせを認めます。
この方の舌を見ると、赤く乾燥しておりました。補中益気湯7.5gと滋陰至宝湯(じいんしほうとう;症例280,494,638、773、789参照)6gを1日2回で、49日分処方したところ、令和5年1月16日に、にこにこして来られメモを渡されました。それには、
1.息苦しい 
2.倦怠感
3.足の付け根の重だるい感じ
4.胃の痛み
5.目のかすみ
6.髪の毛が抜ける

と書いてあり、これらがすべてなくなりとても体調がよくなったそうです。また、食事がとてもおいしく、いっぱいご飯が食べれるようになったそうです。
とにかくうれしいです、と何度もおっしゃいました。

ここで、師匠の下田先生のお言葉をもう一度記載します。
「非結核性抗酸菌症は抗結核剤もあまり効かないし、放っておいてもどんどん他人に感染するとか、本人の命にかかわるといった病気ではないのです。本人の体力をあげて、病気と平和共存して生きていけばいいはずなのに、西洋医学的スタンスだったら、感染症というものは絶対なくならなければいけないのです。だから何が何でも、とにかく副作用が出ようが何であろうが抑えようとしますが、非結核性抗酸菌症は延々とやってもうまくいかないことが多いのです。でもうまく体力を上げて肺の働きを高めてあげると、それはそれとして、あってもたいしたことにはならないで暮らしていけるのです。」

本当にこの通りの症例でした。

病気と平和共存して生きていけるよう漢方を続けていく予定です。また、経過をお知らせします。

漢方がお役に立ててよかったです。