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701.血小板減少症の漢方治療

症例は26歳、女性です。
平成29年8月、姫路市内の総合病院で血小板減少症と診断されました。数値は6.3万(正常値は14~44万)でした。主治医からは、「治療法はない。血小板数が3万を切るまでは、毎月採血して経過観察をする。」といわれたそうです。9月の採血では、数値は6.1万と若干減少したそうです。平成29年9月27 日、当院のホームページをみて、漢方治療を求めて姫路市から来院されました。
身長152.0cm、体重47kg、BMI20.3。
他の症状として、立ちくらみ・手足の冷え・青あざができやすいなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
「気虚」+「血虚」の改善薬である十全大補湯(じゅうぜんたいほとう;症例69、509参照) を一ヶ月分処方したところ、10月28日に来られ、「今月は数値が、13.8万に増えていました。」といわれました。また主治医からは、「また減るかもしれないので、引き続いて経過は追います。」といわれたそうです。

こちらがびっくりするくらい増加しており、私もうれしかったです。

漢方がお役に立ててよかったです。

血小板減少症には、加味帰脾湯や十全大補湯をよく使います。加味帰脾湯の症例はこちらを参照

血小板減少症については、こちらをクリック画像の説明MSD

702.夜が怖くて眠れないの漢方治療

症例は68歳、男性です。高血圧症・高コレステロール血症で普段通院中の患者さんです。
平成29年10月19 日に来院されたときに、次のように語られました。

首の後ろが憂鬱な感じがし、脳外科を受診し、頭部CT検査等を受けられましたが、「特に異常なし。」といわれたそうです。次に整形外科も受診されましたが、やはり、「異常なし。」といわれました。
とにかく、夜が怖くて眠れないそうです。普段からハルシオン0.25mg1錠をのんでおられますが、それをのんでも早く目がさめてしまうそうです。血圧は126/64mmHgと正常でした。
身長159.7cm、体重71.4kg、BMI28.0と肥満を認めます。
半夏厚朴湯(はんげこうぼうとう;症例64、102、103、373、591参照)を処方したところ、11月5日に来られ、「全く不安がなくなり、夜もよく眠れるようになりました。」といわれました。
漢方がお役に立ててよかったです。

半夏厚朴湯について(岡クリニック院長 岡 留美子先生)

「気」は常に体を巡っていますが、ストレスなどでその巡りが悪くなってしまうことがあります。気の巡りが悪くなる(気滞)と体の下部に滞ったり、上部に上がったままになったりすることがあります。
そうすると胃から上にさまざまな症状が出ることが多く、胃ならば食欲不振や吐き気など、胸のあたりでは息苦しさや食道付近の詰まり感などがあります。また、咽がふさがった感じや、かぜを引いているわけではないのに声がかすれたり、空咳が出たりすることがります(頻繁な咳払いも気滞と診断します)。
さらには、表現のしようがない不安感や気分の落ち込み・めまい・眠れないなどといった症状が出ることもあります。
このような症状のあるときに、半夏厚朴湯を使います。

703.小児頭痛の漢方治療

症例は15歳、男児です。
平成28年4月から頭痛(特に朝方)が続くと、平成29年7月8日、姫路市から来院されました。
きっかけは、宿題に追われ、睡眠不足になったことだそうです。総合病院で頭部MRI等の検査をうけられましたが、「異常なし。」といわれたそうです。また、整体にも行かれましたが、それも効かなかったそうです。
他の症状として、下痢しやすい・汗をかきやすい・肩こり・にきび・腹痛・立ちくらみがあります。學校にもあまり行けてないそうです。
身長173cm、体重59kg。
舌は、特に異常ありませんでした。腹部触診により、胸脇苦満(きょうきょうくまん)を認めました(胸脇苦満とは、胸から脇(季肋下)にかけて充満した状態があり、押さえると抵抗と圧痛を訴える状態で、柴胡(さいこ)という生薬を含む柴胡剤を用いる重要な目標です)。また腹直筋も張っていましたので(症例39参照)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう;症例39、66、155、152、186、304、619、680参照)と啓脾湯(けいひとう;症例240、364、398、401、454、635参照))を処方したところ、8月8日に来られ、「腹痛と下痢は治りましたが、頭痛は残っています。」といわれました。さらに続けたところ、9月4日には、「頭痛が消えました。一度胸痛が起こりましたので、循環器科を受診しましたが、異常ありませんでした。」といわれました。11月11日には、「頭痛はありません。朝もきっちり起きることができて、毎日学校に行けています(来院前は1週間学校に行けなかったこともあったそうです)。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

704.耳鳴り・耳閉塞感・聴覚過敏の漢方治療

症例は53歳女性です。
耳のふさがった感じ・耳鳴り・聴覚過敏・動悸・めまい・不眠等の症状があり、漢方治療を求めて、平成29年10月18日に揖保川町から来院されました。
身長152cm、体重51.6kg、BMI22.3。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。また色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれし、「瘀血(おけつ)」体質を認めました。
加味帰脾湯(かみきひとう;症例45、193、239、291、308参照;加味帰脾湯の人は、ちょっと五臓の「脾」が衰えていて(脾虚体質;症例97参照)、軽いうつがある人に使います))を処方したところ、11月29日に来られ、「耳の症状はとれました。ただ薬を飲むのを忘れると症状が出ます。よく眠れますし、動悸もありません。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

同じような症例を、症例409、510に載せております。

705.非結核性抗酸菌症の漢方治療(6)

次の症例は71歳、女性です。
元々逆流性食道炎や骨粗鬆症などで当院通院中の患者さんです。
平成26年度秋の肺癌健診で”右肺野の孤立病巣”を指摘され、CT検査を施行したところ、「右中葉や左舌区及び右下葉S8等にtree-in-bud appearanceやair-space fillingが認められ、肺MAC症などが考えられる。」との診断であったため、平成27年7月、総合病院呼吸器内科受診したところ、気管支鏡の検査で、M.intracellulareによる非結核性抗酸菌症と診断されました。しかし、患者さんが、副作用等から治療に消極的で何も治療を受けずに帰ってこられました。主治医からは、「病変が悪化するようならRECAM療法(リファンピシン+エタンブトール+クラリスロマイシンの3剤併用治療:アールイーカムと呼ぶ)を再検討します。」とのことでした。
元々薬の副作用の出やすい方で、今まで、抗生剤(クラビット、フロモックス)や喘息の薬(シングレア)で湿疹がでたり、漢方薬を含め、色々な薬で下痢をしたりしたため、薬をあまり飲みたくないようです。
身長143.9cm、体重38.8kg、BMI18.7。
そのまま、未治療で様子をみることにしたところ、平成28年4月6日の胸部X線写真では変化ありませんでしたが、半年後の10月21日の胸部X線写真で悪化が見られたため、11月19日から、本人は乗り気ではありませんでしたが、非結核性抗酸菌症によく使う、人参養栄湯(にんじんようえいとう)を開始しました。しかし、平成29年5月8日の胸部X線写真ではさらに悪化が見られたため(症状も咳が増えた)、六君子湯(りっくんしとう;症例97参照))を合わせて処方した(下痢しやすく、食も細いため補中益気湯よりこちらを選択)ところ、11月27日の胸部X線写真では改善し、咳もほとんどでなくなりました。

調子いいので、このまま薬を続けていく予定です。

非結核性抗酸菌症は、人参養栄湯や補中益気湯単独で治療できる方もおられますが、補剤(漢方は、足りないものを補い、過剰なものは抑えることで正常な身体のバランスをとることを基本としますが、補剤はこの中で、心身のエネルギーが衰えて精神的・身体的な能力が減少しているような場合にその衰えた部分を補充する働きをする漢方薬を意味します。つまり”足りないものを補う漢方薬”の総称です)同士を合わせないとだめな方もおられます。

写真はそれぞれ、上から、平成28年4月6日、平成28年10月21日、平成29年5月8日、平成29年11月27日です。

その後、平成30年5月14日に胸部X線写真と採血を行いましたが、写真は前回とかわらず、採血では白血球数7200、CRP(炎症反応)0.14と全く異常ありませんでした。もちろん咳、痰もありません。

 

706.二人目不妊の漢方治療

症例は25歳、女性です。
子供さんが1人おられます。2年前に流産してから、二人目ができないため、平成29年10月10日、漢方治療を求めて受診されました。
他の症状として、頭痛・肩こり・手足の冷えがあります。
身長163cm、体重59kg、BMI22.2。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14参照)を処方したところ、11月7日に来られ、「頭痛・肩こりが治りました。」といわれました。12月8日に来られた時には、「一ヶ月前から夜間に咳がでるようになりました。」といわれましたので、喘息の吸入薬のレルベアを処方させていただきました。平成30年1月18日に来られた時に、「おかげさまで、二人目が授かりました。」といわれました。
当帰芍薬散はそのまま続けていただくこととしました。
二人目不妊については、症例660にも載せております。

漢方がお役に立ててよかったです。

707. 起立性調節障害の漢方治療

症例は12歳女児です。
朝に吐き気と頭痛がして学校に行けなくなり、平成29年10月16日、小児科を受診したところ、起立性調節障害と診断され、メトリジン(ミドドリン塩酸塩)2mgを処方されましたが、知人に、漢方治療の方がよいとすすめられ、平成29年10月20日、たつの市から当院へ来院されました。
身長153.5cm、体重54kg
他の症状として、朝ごはんが食べられない・にきび・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる・のぼせやすい・めまい・立ちくらみ・手足の冷え・気分が沈む・生理痛・生理の出血量が多いなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
六君子湯(りっくんしとう;症例97参照)当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14参照)を合わせて一ヶ月分処方し、11月15日に来られましたが、特に変化はありませんでした。次に11月29日に来られ、「1週間前から頭痛・肩こり・嘔吐があり、朝ご飯が食べれず、ランドセルが重い。」といわれましたので、葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう;症例12参照)を2週間分処方したところ、12月18日に来られ、「調子いいです。学校で保健室に行かなくてよくなりました。しかし、まだ朝ご飯はたべられません。」といわれました。次に1月31日に来られた時には、「朝ご飯が食べられるようになりました。」といわれました。3月9日には、「今までは、朝私が、車で学校まで送っていましたが、自分で歩いて学校に行くことが出来るようになりました。」とおかあさんがいわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

708. COPDの漢方治療

症例は80歳、男性です。
COPDとアルコール性肝障害で、近くの総合病院内科に通院されています(薬は気管支拡張剤の吸入薬と降圧剤をもらわれています)。数年前に禁煙し、お酒は、ビールを毎日5・6本飲んでいましたが、1ヶ月前からそれも飲めなくなったそうです。
最近、息切れ・動悸・食欲不振があり、平成29年9月9日、岡山県玉野市から当院へ来院されました。
身長160.0cm、体重55kg、BMI21.5

他の症状として、便秘・胃もたれ・足やまぶたがはれる・息が吸いにくい・息切れ・体がだるい・疲れやすい・夜中に目がさめるなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
人参養栄湯(にんじんようえいとう)を開始したところ、9月27日に家人から、「肺炎で入院していました。」と連絡がありました。10月2日には、「少しずつ、元気がでてきています。」といわれました。11月6日には、「ごはんがおいしく、主治医にそれ以上体重を増やさないようにといわれた。」といわれました。12月4日には、「とても調子いいです。」といわれました。平成30年1月13日には、「一度かぜをひきました。」といわれました。
 3月13日には、「とても調子いいです。」といわれました。

人参養栄湯は、食欲亢進、認知機能改善、抗疲労、抗うつ、骨格筋強化、骨量増加の作用があり、フレイルこちらを参照)に有用とされています

鹿児島大学の乾明夫先生は、「高齢化の進む我が国において、予防医学の立場から注目されているのが、サルコペニア(骨格筋萎縮)を基礎としたフレイルである。フレイルは漢方で言う未病病態であり、フレイルを予防、加療することによる健康寿命の延長が愁眉の課題になっている。フレイルは人参養栄湯などの補剤の良い適応であり、多成分系を特徴とする漢方は、多様な身体疾患や食欲不振・不安・抑うつ・認知など、心身両面の異常を示すフレイルの治療に威力を発揮するものと期待される。」といわれています。

採血のデータを示します。栄養状態を示す、総蛋白・アルブミン・総コレステロール値が改善し、貧血もよくなっています。このまま続けていただく予定です。
なお、アルブミンは半減期が20日程度と比較的長いため、長期的な視点での栄養評価に向いており、3.5g/dl未満が低栄養の指標となるとされています。

  2017.6.9 2017.10.31 2017.12.19 2018.2.13
総蛋白 6.5 6.7 7.0 7.2
アルブミン 3.7 4.1 4.2 4.2
GOT 60 38 39 33
GPT 25 15 16 11
γGTP 21 12 11 12
総コレステロール 108 122 118 130
コリンエステラーゼ 154 160 145 155
白血球 6800 8300 7300 8200
赤血球 357 350 361 375
ヘモグロビン 11.9 11.7 11.8 12.1
ヘマトクリット 35.3 35.0 35.3 36.6

709. 右季肋部から上部や背部に放散する疼痛の漢方治療

症例は80歳、男性です。
平成29年2月18日、肺に水がたまり(原因不明だそうです)、総合病院内科で治療をうけましたが、その後も、血圧が異常に低く(70代/40代)、手足が冷え、体もだるいため漢方治療を求めて、3月18日、来院されました。
身長169.0cm、体重62kg、BMI21.7 
他の症状として、頻尿・夜間尿・夜間の咳・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる・耳鳴り・めまい・立ちくらみ・手足の冷え・気分が沈む・夜中に目がさめる・眠りが浅いなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。

人参養栄湯(にんじんようえいとう)
と、八味地黄丸(はちみじおうがん;症例42、58参照)を朝・夕に、五苓散(ごれいさん;症例196参照)を眠前に1回投与しました。
また、鉄欠乏性貧血もあるため、6月7日より、フェロミアを追加しました。これで、状態は安定していましたが、平成30年1月8日より、右季肋部から上部や背部に放散する疼痛が出現し、総合病院ペインクリニック科を受診し、リリカ(過剰に興奮した神経から発信される痛みの信号を抑え、痛みをやわらげる薬)を投与をされましたが、痛みは取れないため、トラムセット(アセトアミノフェンと、トラマドールという麻薬に似た薬の合剤)・ロキソニン(消炎鎮痛剤)・タケキャブ(胃薬)・プルゼニド(下剤)・ノバミン(吐き気止め)に変更されましたが、痛みは変わらないどころか、徐々に体力がおちてきたため、2月24日、「漢方で何とかならないか。」と相談を受けました。当帰湯(とうきとう;症例5、71、122、255、408、534、616参照)ブシ末に変更したところ、3月22日に来られ、「痛みがすっかりとれました。」と、大変喜んでいただきました。

漢方がお役に立ててよかったです。

この症例をみてわかりますが、体力の低下した80歳のお年寄りに、西洋医学は、徹底した強力な治療を行っています。タケキャブ・プルゼニド・ノバミンは、ロキソニンの副作用で胃が悪くなるのをタケキャブで防ぎ、トラムセットの副作用に、吐き気・嘔吐・便秘があるため、その副作用予防のため、ノバミン、プルゼニドがそれぞれ投与されているのでしょうが、たかが冷えによる痛みに5種類の薬が必要なのでしょうか?本当に考えさせられる症例です。

症例408にも記載しましたが、当帰湯は、体を温めるのが主たる作用で、主に冷え性の方や胃腸の弱い方に処方される漢方です。適応症として肋間神経痛が明記されており、疼痛にもよいとして広く知られた処方です。

ロキソニンなどの消炎鎮痛剤についての下田先生のコメントはこちらを参照下さい。

710. 感謝のお礼状をいただいた症例

症例は42歳、女性です。
昨年から、吐き気・胸やけと、頻繁にかぜを引き、なかなか治らない、冷え症、花粉症などがあり、ホームページをみて、平成29年3月17日、広島県尾道市から当院へ来院されました。
身長157.0cm、体重45kg、BMI18.3
他の症状として、胃もたれ・のどが痞えるなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また地図状舌もみとめました。
六君子湯(りっくんしとう;症例97参照)コウジン末(;症例449参照)を合わせて一ヶ月分処方し、遠方なのでその後は近くの医院で処方をつづけていただきました。
その後、クリスマスにお礼のカードをいただきました。
了解を得て、全文掲載させていただきます(以下原文のとおり)。

お礼状

寒さも日増しに増します今日この頃、先生におかれましては、ご多忙の日々をお過ごしと存じます。
今年の春、先生に大変親切で丁寧な診察を頂きました。
その節は本当にありがとうございました。結果この一年元気に過ごすことが出来、これも全て先生のおかげと感謝しております。
先生がサイトで詳しく症例を掲載して下さったおかげで自分と類似した患者さんの写真を見つけ、東洋医学からのアプローチもあるのだと知る事が出来ましたし、恐らく私と同じような患者さんいらっしゃる事と存じます。
これからも先生のサイトをきっかけに私のように元気に回復される方が沢山出てくる事を願わずにおられません。
漢方がこれほどまでに即効性あるとは本当に驚きで、東洋医学の歴史の奥深さに感嘆いたしました。
昨年来の体調とは打って変わって、今年は元気で過ごせている事への感謝すると共に、改めまして厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
季節がらご多忙の事と存じますが、どうぞお体の方もご自愛いただき、ご家族様皆様で良いお正月をお迎え下さい。

患者様の笑顔と「ありがとうございます。」のお手紙、
私の何よりの励みになります。こちらこそ、元気を頂きありがとうございました。

711.非結核性抗酸菌症の漢方治療(7)

次の症例は64歳、女性です。
既往歴として59歳の時に大腸癌で手術されています。
60歳の時に非結核性抗酸菌症(肺MAC症)と診断されています。症状は空気の悪い場所で咳が出る程度だそうです。経過をみられていましたが、陰影が拡がってきたため大学病院に紹介され、平成29年10月4日からクラリスロマイシン(CAM)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)で治療を開始されています(1~1年半続ける予定)。平成30年2月11日、主治医より、「右の下葉の陰影が一部改善している。」といわれましたが、体中に湿疹が出て、口内炎がひどく、胃は元々丈夫だったのに、食欲が全くなくなりとても薬を続けれる状態でなくなり、娘さんが当院のホームページをみられ、3月12日漢方治療を求めて豊岡市から来院されました。身長147.0cm、体重48.5kg、BMI22.4。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。人参養栄湯(にんじんようえいとう))と六君子湯(りっくんしとう;症例97参照))を合わせて処方しました。飲みだして、1週間・2週間・3週間とどんどん体調がよくなってきたため、4月2日、主治医に、「薬を休みたい(本当は中止したかったが、それは言えなかったそうです)。」と思い切って申し出たそうです。主治医に、「今やめると、今までやってきたことが水の泡になる。」といわれたそうですが、とても薬を飲む気にはなれなかったそうです。今後、陰影を追うため、通院はつづけるそうで、また経過を聞こうと思います。

近畿中央胸部疾患センターのホームページには次のように記載されています。

誰でも菌を吸い込んでいますが、病気になるヒトは極わずかです。
古い結核のあと、じん肺、肺気腫、気管支拡張など肺の中になんらかの傷あとがあるヒトが発病しやすいと考えられています。
最近肺の中に特に傷あとのない中年以降の女性に発症する肺マック症が増加していますが、その理由は不明です。
肺カンザシ症は男性の喫煙者に圧倒的に多く、また粉塵吸入の職歴をもっている方が多いのも特徴です。
肺マック症の場合、特に過労や手術後など体の抵抗力が弱った時に症状が出現し診断される事があります。

漢方的には、本性はほぼ全員、「気虚」の人、つまり体力のない人です。こんな人に、食欲のなくなるようなきつい治療は無理ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

712.犬咬傷の漢方治療

次の症例は25歳、女性(私の娘)です。
平成30年5月4日夕方、飼い犬のタロウに、靴下で遊んでいたのを取り上げようとして右手掌をかまれました。とにかく痛くて、全く手を握れない状態でした。とりあえず、水道水でよく洗浄してから、桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照))治打撲一方(ぢだぼくいっぽう;症例227、228、262、268、355、413,643参照)))を合わせて飲ませました。また、傷口には紫雲膏(しうんこう;症例54参照)を塗りました。
翌日5日の朝も同じ薬を飲ませましたが、とにかく痛みが強く、前日よりさらに腫れがひどくなっておりました。そこで、昼から排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)2包に変更し、夜にも同量を飲ませました。
すると、翌日の5月6日朝には、痛みや腫れもましになり、手も握れるようになりました。
さらに、5月7日朝には腫れが完全に引いて、痛みも全くなく、傷口もきれいになり、風呂にも両手を使って入れたそうです。昼から、排膿散及湯を1包に減らし、5月8日朝には、抗生剤等の西洋薬を使用せずに、完全に治癒しました(下の写真)。腫れがひどい時には、咬口がふさがっていましたが、写真をみると自然に破れて、排濃したのがわかると思います。

”動物による咬傷”の西洋医学的な治療はこちらをクリック

後から知りましたが、治療は結構大変なようです。いつもお世話になっているペットのトリマーさんが、犬に手を咬まれた時には、外科に1ヶ月間通院したといわれていました。

排膿散及湯については、こちらをクリック。この先生も書かれていますが、化膿した病変は本当に2、3日以内に排膿してくれます。もちろん抗生剤を使わずにです。お試しください。

713.小児虚弱の漢方治療

次の症例は11歳、女児です。
体重が増えない・風邪をよく引く・食が細いなどを訴え、平成30年6月4日漢方治療を求め来院されました。身長127.0cm、体重21.0kg(この年齢の平均は身長138cm、体重36kg)。小建中湯(しょうけんちゅうとう;症例26参照)))を一ヶ月分処方したところ、7月3日に来られ、おかあさんが、「今まで暑くても汗が出なかったのが、出るようになりました。朝、すっと起きれるようになり、朝食もしっかりとれるようになり、昼もおなかがすくようになりました。疲れるとキーキー言っていたのが言わなくなりました。」と大変喜んでいただきました。
7月31日に来られた時には、「どんどんよくなっています。便秘が改善し、今まで冷え症で、夏でも長袖だったのが、今年はノースリーブでいけます。」といわれました。
今後、身長・体重の動きを追わせていただきます。

漢方がお役に立ててよかったです。

(小児の虚弱体質については、症例26・29・109・145・190・192・321も参照して下さい)

714.手足のほてりの漢方治療

症例は34歳女性です。
手足が熱くて眠れない、睡眠導入剤を飲んでも眠れないとの訴えで、平成30年5月31日漢方治療を求めて姫路市から当院へ来院されました。
身長152.0cm、体重43kg、BMI18.6
この方の舌を診ると、色が赤っぽく乾燥し、特に舌先が紅くなっていました(舌尖紅潮;症例72、141参照)。
加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210参照))と、三物黄芩湯(さんもつおうごんとう;症例212))を合わせて1ヶ月分だしたところ、7月2日当院へ来られ、「手足はまだ少し熱いですが、ずいぶんましで、よく眠れるようになりました。」と、喜んでいただきました。

他院では原因はわからず、対症療法として睡眠導入剤が投与されていました。
「漢方で簡単に治るのに‥。」と、思った症例でした。

漢方がお役に立ててよかったです。

同じような症例を、症例729に載せております。

症例212にも載せましたが、もう一度、下田 憲先生の三物黄芩湯についてのコメントを載せます。

三物黄芩湯について(下田 憲先生コメント)

独特な薬で他にあまり使えないです。生薬の苦参(くじん)は他にあまり使わない薬です。黄芩が苦参と生地黄を運びます。特に、苦参は皮膚の熱を冷ますような作用をもっています。そして、熟地黄は内分泌腺など腺の血行を改善する作用を持っていますが、生地黄は表面の熱を冷まします。
特徴的に手足のほてり、特に更年期女性に出てくる手足のほてりに非常に良く効く感じがあります
要するに、血(けつ)の流れが悪くなれば普通は冷えるんですが、なぜか手足がカサカサになって火照ってる女性は確かにいるんです。血虚、血瘀でなく、しいて言えば血燥というのですが、血が乾燥してしまう。
やはり血の流れの悪い所に何か熱を生み出すものがあって、手足に熱を生むみたいなんですが、これも病態はよくわかりません。更年期に似た状態を自分で経験できないためかもしれませんが‥。
三物黄芩湯の状態は、ほとんど更年期前後の御婦人しかない。どちらかといえば、桂枝茯苓丸を飲むようなタイプの御婦人なんですが、桂枝茯苓丸みたいな急迫症状は出さないで、ただ手足のほてりがあるだけで、体の芯も熱いことが多い。
体の芯が冷えてて手足が熱ければ温経湯なんかですね。通常は、手足が火照るだけでは来院されないんですが、手足が火照るために眠れないというぐらい強い症状になることがあるみたいなんですね。男性は経験できない症状と思うんですね。確かに手を触ると温かいんですが、本人が言うほど灼熱した感じではないんですよ。

中高年に多いほてり感・煩熱に効く漢方薬については、こちらをクリックひぐちクリニック

715.下痢型過敏性腸症候群の漢方治療

次の症例は53歳、男性です。
約30年前より、水様便だそうです。
それが、数年前から特にひどくなり、胃カメラや腹部MRI(便がたまっているといわれた)等の検査は異常なく、下痢型過敏性腸症候群と診断され、イリボー(遠心性神経のセロトニン5-HT3受容体に拮抗することによって下痢を改善し、求心性神経のセロトニン5-HT3受容体に拮抗することによって腹痛を改善する)を投与されましたが、全く無効だったそうです。
胸やけもありましたが、それはネキシウム(PPI)の投与で少しましになったそうです。
知人の紹介で、平成30年6月12日、漢方治療を求めたつの市から来院されました。
身長164cm、体重44kg、BMI16.4とやせを認めます。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、気虚+瘀血(おけつ)体質と診断いたしました。
腹診では腹直筋緊張(;症例279参照)を認めました。
他の症状として、だるい・吐き気・目がかすむ・耳が詰まる・口内炎ができやすい・腹がはる・腹が鳴る・疲れやすい・立ちくらみ・緊張性の振戦などがあります。
桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう;症例41、78参照)大建中湯(だいけんちゅうとう;症例44、123、396、499、585、620、655参照)(2つ合わせて中建中湯といいます)を合わせて一ヶ月分処方したところ、7月9日に来られ、「薬を飲みだして、3日目から30年ぶりに普通便になりました。胸やけも、かかりつけ医からネキシウムをタケキャブに変えてもらい消失しました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

なおこの方は、小さい時、毎日のように鼻血(症例26参照)を出していたそうで、近くの漢方医に母親が連れて行ったそうですが、薬は出してもらえなかったそうです。その時に小建中湯(しょうけんちゅうとう;症例26)を出してもらって体質を改善していたら、大人になってこんなに苦しまなくて済んだのに、と思いました。

716.痒疹の漢方治療

次の症例は42歳、女性です。
2年前に出産してから(産後6kg体重が増えたそうです)、下腿と上腕中心に多発する赤みの強い丘疹(夕方から夜間にかけて痒みが増強)があり、加古川市の総合病院皮膚科で痒疹(ようしん)と診断され、ステロイドの軟膏や患部に紫外線をあてる光線療法(PUVA(プーバ)、ナローバンドUVBなど)で治療されてきたそうですが改善しないため、平成30年6月13日、宍粟市からホームページをみて当院へ来院されました。
身長156cm、体重53kg、BMI21.8。
他の症状として、便秘気味・口の中が渇く・舌が荒れる・爪がもろい・皮膚がカサカサする・手足の冷え・足がむくむ・眠りが浅いなどがあります。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、気虚+瘀血(おけつ)体質と診断いたしました。

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例107、165、305、306、323、329参照)桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照)を合わせて一ヶ月分処方しました。
7月13日には、「赤みも引いて、痒みもなく、跡形だけになりました(下写真)。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

痒疹については、症例165、332も参照下さい。

痒疹については、こちらをクリック 日本皮膚科学会

717.眠くてしようがない(嗜眠)の漢方治療

次の症例は56歳、女性です。
2年前から、日中も眠気が強くて仕方ないため、平成30年3月14日、たつの市から当院へ来院されました。
身長161cm、体重64kg、BMI24.7。
他の症状として、下痢しやすい・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる・鼻水・足がむくむ・汗をかきやすい・耳鳴り・口の中が渇く・頭痛・肩こり・手足が荒れるなどがあります。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、気虚+瘀血(おけつ)体質と診断いたしました。
酸棗仁湯(さんそうにんとう;症例623参照)と六君子湯(りっくんしとう;症例97参照))を合わせて処方したところ、4月11日には、「眠気は少しましです。下痢は治りました。」といわれました。コウジン末(;症例449参照)を追加し、7月4日には、「まだ少し眠気はありますが、体が元気になってきています。コウジン末があっていると思います。」といわれました。8月3日には、「眠気はとれました。もう少し続けたいと思います。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

酸棗仁湯について(下田 憲先生コメント)

漢方薬に睡眠薬はありません。強いていいえば、睡眠作用に近いものに遠志や木香がある程度です。不眠の時に何を飲みますかというと、教科書の筆頭に出てくるのが酸棗仁湯なのです。でもこの薬の中にはそういう成分が全然入っていないのです。これは何なのかというと、眠るのは五臓の”心”が眠るのです。嗜眠(傾眠とほとんど同義で、睡眠に陥ろうとする傾向が強いもの)は間違いなく”心”の障害です。”心”の治療をして元気になって来るとだんだん眠らなくなってきますというか、正常な眠りになります。逆にいえば、”心”が一つのリズムを持っていて、昼は起きていて夜は眠むるというのが正常です。眠むるというのは”心”が休むことです。”心”は本来自分のリズムを持っていて、条件が整えば眠るのです。だから不眠というのは条件を整わせないのが原因になります。

なお、最初に不眠にも嗜眠のものにも酸棗仁湯を適用するといったのは、吉益東洞です。

718.夏バテの漢方治療

症例は80歳女性です。
高血圧症で通院中の患者さんです。
平成30年7月20日に、「夏バテで、下痢が続き、体がだるくて食事もとれません。」と来院時にいわれました。
身長147cm、体重42.4kg、BMI19.4。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また、両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
清暑益気湯(せいしょえっきとう;症例397、587参照)を19日分処方させていただいたところ、8月6日に来られ、「とても調子いいです。暑い間続けようと思います。」と大変喜んでいただきました。
漢方がお役に立ててよかったです。

清暑益気湯は、名前が示すように暑気を清め、気を益す働きがあります。
夏になり食が細くなって水っぽいものを欲しがり、手足がだるく足の裏が火照る、時に下痢したり大便がゆるくなる人に適しています。

清暑益気湯について(下田 憲先生コメント)

ちょっと暑くなっただけで、普通の人は大丈夫なのに、真っ先に倒れるような人に使います。普通の人はあまり夏負けしませんが、夏負けをするのはほとんど五臓の脾や肺の弱い人です。基礎疾患が基本的にない人は清暑益気湯ですが、脾や肺の弱い人は基礎疾患が常にあることも多いのです。基礎疾患があって治療している人が夏負けや夏やせ状態、あるいは夏風邪を引いたときには、清暑益気湯より補中益気湯になります。

719.過敏性腸症候群(下痢型)の漢方治療

次の症例は14歳、男性です。
身長153cm、体重42kg。
以前より1年を通して1日2回くらの下痢(とくに4~6月にかけては腹痛もひどい)が起こるため、知人の紹介で、平成30年6月4日漢方治療を求めて太子町から来院されました。
舌は特に異常は認めませんでしたが、腹診で、腹直筋も張って、中脘(症例186参照)に圧痛を認めましたので、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう;症例39、66、152、155、186参照)を処方したところ、7月6日に来られ、「腹痛も下痢も治まりました。」と、いわれました。学校まで約2kmあるそうですが、その間ももたなかったので、本当によくなりましたと喜んでいただきました。

本症例は過敏性腸症候群(下痢型)と診断してよいと考えます。

漢方がお役に立ててよかったです。

720.酒皶(しゅさ)様皮膚炎の漢方治療

症例は54歳、女性です。
平成30年5月4日から、両頬・おでこにニキビ様のぶつぶつが出現、5月23日、近所の皮膚科でゼビアックスローション(抗菌作用をもつにきびの薬)、ロコイドクリーム(ステロイド)、ルリッド(マクロライド系抗生剤)を2週間分処方されました。しかし、2週間後症状はさらに悪化(ぶつぶつがさらに増え、痒みが強く、顔が赤く腫れあがった)ため、6月8日同じ皮膚科を再受診したところ、今度は酒皶(しゅさ)様皮膚炎と診断され、フラジール(メトロニダゾール)膣錠0.8錠とプロピレングリコール0.6mlと親水クリーム18.64gを混合したものと、タリオン(抗アレルギー薬)とルリッドをさらに2週間分処方されましたが改善しないため、ネットで漢方薬がよく効くとの情報を得て、6月12日当院を受診されました。大きなマスクをして、大きなつばのある帽子を目深にかぶって顔をかくして診察室に入ってこられました。今でこそ言えますが、本当に気の毒で、漢方で治せるのだろかと真剣に考えたくらいひどかったです。
その他の症状として、便秘(5から6日に1回)があります。
身長163.0cm、体重49kg、BMI18.4。
この方の舌を見ると、舌の色は紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質を認めました。
通導散(つうどうさん;症例499参照)十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例107、165、305、306、323、329参照)と寝る前に黄連解毒湯を合わせて2週間分処方したところ、6月25日に来られ、「朝起きたときは、赤みが引くようになりました。」といわれました。今度は一ヶ月分処方したところ、7月25日に来られ、赤みが引き、きれいな顔になっておられ、「こんなにきれいに治るなら、最初に顔の写真とってもらっておけばよかったですね。」と笑顔で話されました。8月24日には、診察室に入って来るなり(もちろんマスクも帽子もせずに)、「先生、顔ツルツルです。」と頬をなでながら笑顔で入ってこられました。また、「今まで顔に汗をかかなかったのに、普通に汗をかくようになりました。便秘は治っています。朝起きがけや、風呂に入ったり、食事をしたりするときに少し顔の皮膚が赤くなるぐらいです。」と話されました。

漢方がお役に立ててよかったです。

酒皶(しゅさ)については、症例605、632、651も参照下さい。

酒皶様皮膚炎について

慢性的に顏の赤みやニキビ様のぶつぶつを伴うことの多い主に顏の皮膚疾患です。原因がさまざまであるうえに、基礎疾患の有無の違い、体質的な素因を伴う場合のある病気であることなどから、治療法が確定しておらず難治性です。
酒さ・酒さ様皮膚炎については、西洋医学的な治療については私は専門ではありませんので、こちらを参照下さい
はなふさ皮膚科
漢方的には、お血が病態の中心と考えられます。
また、酒さ様皮膚炎の患者さんが自分の顔写真を載せて辛い気持ちをブログに書いておられます。参考にしてください。クリック
当院の症例もまさしく同じような状態でした。
このような方が一日も早く漢方治療を受けられるよう願っております。

721.”漢方が効く人は幸せです”がわかる症例

症例は68歳、女性です。
元々、平成14年から、高コレステロール血症・高血圧症・12指腸潰瘍・気管支喘息などで当院に通院されている患者さんです。身長159.0cm、体重62kg、BMI24.5。
平成29年9月29日に来られた時に、「先生、ぎっくり腰になり、つらいんです。」といわれましたので、「漢方なら簡単になおりますが‥。」と答えたら、「飲んでみます。」との返事でしたので、麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を合わせて処方(症例455参照)したところ、1日で治り、漢方薬に目覚められました。
11月29日には、「先生、肩こりが最近ひどいんです。なんとかなりませんか。」ときかれましたので、葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう;症例12参照)を処方したところ、12月9日に来られ、「先生、飲んですぐによくなりました。」といわれ、今度は、「私体力がないので、何か元気になる漢方はありますか?」といわれましたので、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を処方しました(これは現在もずっと飲まれています)。次に、平成30年3月28日に来られた時に、「先生、最近膝が痛むんです。これも漢方でいけますか?」といわれましたので、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)に、薏苡仁湯(よくいにんとう)を合わせて処方した(症例598参照)ところ、4月27日に来られ、「すぐに痛みは改善しましたが、また最近痛むようになりました。」といわれましたので、しばらく続けていただいたところ、6月1日に来られたときに、「完全に膝は治りました。」といわれましたが、今度は耳鳴りがするとのことでしたので、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)を処方した(症例34参照)ところ、7月27日に来られ、「すぐに耳鳴りが消えました。」といわれました。そして、この時に、「いつも頻繁にかぜを引いていたのに、補中益気湯を飲みだしてから全く引いていません。」といわれました。漢方が効く人は幸せです。
この方は今では漢方の大ファンになり、お孫さんも紹介して頂いております。

漢方がお役に立ててよかったです。

722.夜泣きの漢方治療

症例は2歳3ヶ月、女児です。
この方のおばあちゃんが当院通院中です。
夜泣きが激しく、平成30年8月4日、漢方治療を求めて姫路市から来院されました。
抑肝散(よくかんさん;症例24、25、144、479参照)を1袋寝る前に処方したところ、8月21日におばあちゃんが来られ、「飲み始めたその日から夜泣きがなくなりました。家族みんなの大迷惑になっていたので、本当に助かりました。」と感謝されました。
たったこれだけのことですが、私が興味をもったのは、漢方の即効性と、たかが夜泣きですが、その家族にとっては、本当に大問題であるという2点です。
同じような症例を、症例144、479にも載せております。

漢方がお役に立ててよかったです。

723. 起立性調節障害の漢方治療

症例は10歳9ヶ月、女児です。
平成30年4月16日、近医で、採血時(身長が低いため、成長ホルモン値を調べるため)に、脳貧血を起こし、頭部を打撲したそうです。そのショックから朝が起きられなくなり、起立性調節障害と体位性頻脈症候群と診断されました。たまに頭痛もするそうです。平成30年6月14日、姫路市から当院へ来院されました。
身長130cm、体重28kg(この年齢の平均身長は142cm)。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
六君子湯(りっくんしとう;症例97参照)苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、7月24日に来られ、お母さんが、「絶好調です。朝早くから起きれるようになりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

724. 乳児湿疹の漢方治療

症例は0歳2ヶ月、男児です。2835グラムで生まれ、母乳で育てられています。
平成30年6月15日、顔や体に湿疹が多発し、皮膚科に行っても治らないと、漢方治療を求めて来院されました。治頭瘡一方(ちづそういっぽう)1包を、1日2回に分けて飲んでいただき、塗り薬として紫雲膏(しうんこう)を処方したところ、7月9日に来られ、「きれいになりました。」といわれましたので、さらに同じ処方を念のため1カ月分処方しました。
ところが、9月22日にまた来られ、「飲まないとまた出てきました。」といわれましたので、また同じ薬を処方させていただきました。

漢方がお役に立ててよかったです。

同じような症例を症例733に載せております。

治頭瘡一方については、こちらを参照ください クリック

725.ムカデ咬症の漢方治療

次の症例は、私の家内です。
平成30年10月6日、夜8時頃、風呂からあがり、スリッパを履いたところ、中にムカデが潜んでいたらしく、右足の親指先端を咬まれ(ムカデが飛びつき、刺された!と思われている方がとても多いのですが、鋭いアゴで噛みつくため、正確には「ムカデに咬まれた」というのが正解だそうです)てしまいました。今回のムカデは過去最大サイズの五寸ムカデでした。
本人の話によると、針が爪の間に刺さったような激しい痛みだそうです。
症例448と同じく柴苓湯(さいれいとう)1包と昔からまむし咬症に使うとされる、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)を2包飲ませました。30分後にまた1包ずつ飲ませ、さらにもう一度30分後に同量を飲ませました。
3時間で全く痛みは消失しました。2時間後くらいに両足にほろせが出て痒みを認めましたが、それもすぐに引きました。結局、紅斑、腫脹も残らずに済みました。

症例448のように中サイズのムカデでしたら1時間で治りましたが、五寸ムカデの場合、3時間かかることがわかりました(しかし、西洋医学的な治療では数日以上はかかると思います)。

ムカデについては、こちらに詳しく書いてありましたので参照下さい(熊本シロアリ駆除.com)

こちらをクリック

なお、この記事で初めて知りましたが、ムカデはつがいでいるというのは嘘だそうです。ずっと信じていたのでトリビアでした。

726.高校生の体調不良の漢方治療

症例は15歳、女性です。
平成30年5月から頭痛、吐き気(光がまぶしい、熱が体にこもると頭痛が出やすい。)があり、6月に、近医で頭部CT検査や血液検査を受けましたが、「異常なし。」といわれました。しかし、その後も症状は続き、8月からは、ふらつきも出現し、9月からは、ぐるぐる回るめまいもおこり、10月4日には、めまい、頭痛、吐き気、胃痛、ふるえが起こったそうです。途中で片頭痛薬のアマージを処方されましたが、全く効かなかったそうです。小さい時から、立ちくらみが多く、調子が悪い時には血圧が低いといわれました。その他の症状として、疲れやすい、乗り物酔いをしやすい、暑がりでのぼせやすい、鼻血をよく出す、肩こり、便秘もあります。
知人の紹介で、平成30年10月6日、太子町から来院されました。
身長154cm、体重46kg。
舌は、特に異常ありませんでした。
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう;症例51、648参照)苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照))を処方したところ、10月27日に来られ、「だるさはましになりましたが、やはり頭痛と肩こりがつらいです。」といわれましたので、苓桂朮甘湯を葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう;症例12参照)に変えたところ、12月1日に来られ、「頭痛・肩こりが消え、とてもよくなりました。」といわれました。ただ、「生理の1週間前だけ、だるさや頭痛が少しある。」とのことで月経前症候群のような症状でしたので、と芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん;症例143、308、338、527、538参照)を1包眠前に追加しました。

漢方がお役に立ててよかったです。

727.帯状疱疹(ヘルペス)後神経痛(6)の漢方治療

次の症例は76歳、男性です。
平成29年2月に、右胸部の帯状疱疹(ヘルペス)を発症。
総合病院皮膚科と麻酔科(最初に集中してブロック注射もした)で治療を受けられましたが、結局、痛みが残り、毎日、夜中と午前中が特に痛みがひどいそうです。
リリカ(症例255参照)という、末梢性神経障害性疼痛に用いて、神経痛をやわらげる新薬と、トラムセット(中枢神経系に作用し、鎮痛作用を示します。通常、非オピオイド鎮痛剤で治療困難な非がん性慢性疼痛、抜歯後の疼痛の治療に用いられます)とノイロトロピン(生体内に備わっている痛みを抑える神経の働きを高める作用に加えて、末梢の血流改善作用や痛みや炎症に関与するブラジキニンの遊離抑制作用により痛みを和らげる)が処方され、痛みによる不眠のため心療内科から、セパゾン(安定剤)、ルネスタ(睡眠薬)、スルピリド(低用量では抑うつ気分や、不安やいらいら感、やる気がなくなるなどの症状の治療に用いられ、高用量では、不安、緊張、興奮をしずめて、気分の安定化に用いられる。)が出ています。
知人の紹介で、平成30年5月7日、姫路市から来院されました。
身長162cm、体重50kg、BMI19.1。
入浴時には痛みが少しだけ和らぐそうです。
その他の症状として、いらいらする、寒がり、耳鳴り、目の疲れ、食欲不振、不眠があります。
六君子湯(りっくんしとう;症例97参照)当帰湯(とうきとう;症例5、71、122、255、408、534、616、709参照)附子(ブシ;症例2参照))を足して一ヶ月分処方いたしましたが、7月9日に来られ、「前回の薬は、痛みがかえってひどくなるため、1週間しか飲めませんでした。」といわれました。
そこで、末梢性神経障害性疼痛によく使う抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ;症例34参照)を投与しましたが全く効かず、冷えによる痛みに使う麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう;症例49参照)なども試しましたが、かえって痛みが増強し、「まだ最初の処方が一番まし。」とのことでしたので戻してみましたが。やはり痛みが続くため、11月5日に柴胡疎肝湯(=四逆散7.5g、香蘇散5g、四物湯2.5g混合)に変えたところ、11月19日に来られ、「痛みがすっかり楽になりました。」と笑顔で言っていただきました。

治療に難渋した症例ですが、漢方がお役に立ててよかったです。

柴胡疎肝湯については、こちらの文献をご覧ください画像の説明帯状疱疹痛に対する柴胡疎肝湯の効果ー3症例の検討ー 上村 聡子 平田 道彦他(痛みと漢方 Vol.21 p80-82,2011)

帯状疱疹(ヘルペス)後神経痛については症例5、122、124、255、340も参照ください。

728.左半身の痛みの漢方治療

次の症例は48歳、女性です。
2日前から左半身に痛みを生じたそうです。最初はわき腹から大腿にかけてで、次いで首や足指まで広がったそうです。
平成30年12月7日、知人の紹介で来院されました。
身長150cm、体重41kg、BMI18.2。
その他の症状として、乗り物酔いする・寝つきが悪い・食後の眠気・目の疲れ・めまい・肩こりがあります。
抑肝散(よくかんさん;症例24、25、278、669参照)を投与したところ、12月27日に来られ、「痛みは取れ、体がすっきりしました。また夜もよくねむれるようになりました。」といわれました。

話を聞くと受験生2人を抱えて、ストレスが多いそうです。

漢方がお役に立ててよかったです。

729.足が熱くて真冬でも扇風機を足にあてないと眠れないの漢方治療

次の症例は50歳、女性です。
高校生の頃から、足が熱くて真冬でも扇風機を足にあてないと眠れかったそうです(足を触ると冷たいそうです)。そのため旅行時には必ず扇風機を持参する必要があったそうです。
また勉強や仕事中は足を水につけてしていたそうです。
今まで多くの病院を受診しましたが、まったく相手にしてもらえなかったそうです。
平成30年7月25日、知人の紹介で宍粟市から来院されました。
身長163cm、体重67kg、BMI25.2。
この方の舌を見ると、白い苔がつき、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
その他の症状として、首から上に汗をかく・顔がほてる・足がむくむ・膝の痛み・肩こり・中途覚醒があります。
三物黄芩湯(さんもつおうごんとう;症例212、714)六君子湯(りっくんしとう;症例97参照)を合わせて1日2回で1ヶ月分だしたところ、8月29日に当院へ来られ、「今は、扇風機でなくてアイスノンを足に当てて寝ています。」といわれました。あまり変わりないようなので、三物黄芩湯を1日3回に増量したところ、10月3日に当院へ来られ、「足の熱いのが少しましになってきました。時々朝目覚めたときに足が布団の中に入っている時があります。」といわれました。11月2日に来られた時に夜間頻尿を訴えられましたので、六味丸(ろくみがん;;症例128、194、412、414、457、613、646、667症例参照)と三物黄芩湯を1日2回、六君子湯を眠前に1回にしたところ、12月5日に当院へ来られ、「夜間の尿の回数が3~4回が1~2回に減りました。また足が熱くて夜起きることがなくなり、眠れる時間が長くなりました。」といわれました。さらに続けたところ、平成31年1月9日に来られ、「この1ヶ月間初めて、アイスノンも扇風機も使わず夜眠れるようになりました。」と大変喜んでいただきました。

本症例は、六味丸と三物黄芩湯とよくなっておりますので、腎陰虚の症例と考えられます。

漢方がお役に立ててよかったです。

腎陰虚については、こちらを参照ください クラシエ

腎陰虚による手足のほてりについては、こちらを参照ください ひぐちクリック

730.転倒による腰部打撲と肋骨骨折の漢方治療

次の症例は78歳、女性です。
普段高血圧症で当院へ通院されています。
身長150cm、体重43kg、BMI19.1。
平成31年1月26日の夕方、急にふーとなり転倒し、胸と腰を強打されました。土曜日なので病院が閉まっているため、1月28日(月)までがまんし、近所の整形外科を受診したところ、腰部打撲と肋骨骨折と診断されました。投薬を受けましたが、痛みが改善せず、便秘もひどくなったため、ご主人が2月1日(金)に相談に来られました。治打撲一方(ぢだぼくいっぽう;症例227、228、262、268、355、413、524参照)桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照)を合わせて1週間分処方したところ、次に血圧の薬をとりに来られた時に、「すぐに便が出るようになり、痛みも楽になり助かりました。」と喜んでいただきました。

師匠の下田 憲先生は、「普段何でもなく健康な人がひどい打撲・捻挫・外傷を受けたときは、まず目をつぶって桂枝茯苓丸を投与しておけば、ほとんど間違いないのです。それをしないでおくと、数日後にはひどい便秘になって局所の痛みが強くなることがありますが、その時使うのが桃核承気湯です。結構強い症状のまま慢性化していくと通導散になります。強い症状のまま、なんとなくすっきりしないというのが治打撲一方です。」といわれてます。

漢方がお役に立ててよかったです。

同じような症例を症例524に載せております。

織部 和宏先生(大分県)講演スライドより

私がこの治打撲一方のお世話になったことは、過去に2回あります。私は大学時代は合気道とワンゲルでがんばっていましたが、医院を開業後は怪我をしたくなかったので社交ダンスを始めました。開業しますと勤務医の頃と違い、自分で努力しない限り運動不足になりがちです。その点社交ダンスはup、downだけでなく、前後左右へ動きますので、日ごろ使わない筋肉も鍛えられ、また姿勢もよくなりますので、結構熱心に練習に通っていました。そしてパーティで披露することになりました。他人にお見せするわけですから、無様な踊りはできません。いつにも増して真剣にトレーニングしていましたら、ある日左ひざが腫れて内出血し、痛んで歩けなくなってしまいました。出場は4日後です。あせってもどうしようもありません。そこで服用したのが治打撲一方です。結果はドラマチックで2日分できれいに改善し、本番は大きな拍手の中、気持ちよく踊り終えることが出来ました。
2回目はこれまたダンスの大会の前日、東京の先生の接待でいささか飲み過ぎてエレベーターで意識消失し、顔面を強打。歯を4本折りました。病院へ緊急入院しました。仕事を休むこともできません。そこで桂枝茯苓丸加薏苡仁と治打撲一方を合方で服用、歯は別ですが、1週後、急に回復し周囲をびっくりさせました。治打撲一方は本当に効くと思いました

731.痔核嵌頓の漢方治療

次の症例は65歳、男性です。
当院には、高血圧症、胃潰瘍等で通院中の患者さんです。
痔で、姫路市の肛門科に通い、座薬(1日2回)と軟膏を処方され、3週間ほど治療を続けられましたが痛みは続いていたそうです。平成31年1月30日、痛みが激烈になり、「明日にしか肛門科に行けないから、とりあえずの痛み止めをいただけないか。」と当院に来院されました。以前にも同じような状態になって入院され、治療費が22万円もかかったそうです。
麻杏甘石湯を1週間分処方し、初日は2包ずつ6包のむように指導しました。すると、薬局の先生からすぐに、「痔の方に喘息の薬が処方されている。間違いではないか。」と疑義紹介がありましたが、理由を話しそのまま処方させていただきました。
3月28日、定期の薬をとりに来られた時に、「最初の2包を飲んだ時点で痛みがうそのように楽になり、次の日にはほとんど痛みがなくなりましたが、念のため4日ほど続けました。痔核も元にもどり、今は何の症状もありません。いやあ漢方はこんなに効くんですね」と大変感謝していただきました。

【嵌頓痔核の病態】
内痔核の初期のころは肛門の外に出てくることはなく、ときに出血する程度ですが、進行するにつれ、肛門の外に顔を出すようになります。重症になると肛門括約筋の締め付けにより、うっ血→浮腫→血栓形成に至り、炎症による激しい痛みがおこり、着座や排便もできないほどの激しい疼痛をきたし、日常生活が困難なまでになります。本症例がまさにこの状態だと思われます。
このような痔核が肛門の外に出て戻らず、痛みのひどい時には、麻杏甘石湯を処方します。これは本来は肺に作用して咳を止める漢方薬ですが、痔の痛みにもよく奏効することが知られています。私がはじめてこのことを教えていただいたのは、広瀬滋之先生(故人)です。先生は5g(2包)ずつ頓服させなさい(漢方薬を急性期の治療に使う時は2倍、3倍量使います)といわれました。
「五臓六腑では、「肺」と「大腸」が表裏を成していると考えられ、実際の臨床にも応用されている。古矢知白(ふるやちはく)は、『古方括要』巻之中「痔失」の中で「麻黄杏仁甘草石膏湯 出血下重疼痛して大便難或は肛門のほとり李核の如く腫れ痛み忍びがたき者を治す」と、肺の処方である麻杏甘石湯を大腸の病変である痔核に用いると解説している(木村容子他 便通を改善することで気管支喘息症状の改善をみた3症例 日東医誌 Vol.60 No3 391-395,2009より)。大塚敬節先生は『漢方診療30年』で、この記述を追試し、「麻杏甘石湯を痔核に用いたのは、これが初めてであった。この処方は、一般には喘息や気管支炎に用いられたものであるが、古矢知白が『古方括要』の中に、麻杏甘石湯で睾丸炎や痔核が治ると書いてあったのを思い出し、この方を用いたところ、即効性があって、知白の言が偽りでないことを知った。」とあります。
また、木村豪雄先生は、『新・漢方処方の適応症』の中で、痔核嵌頓による疼痛に本剤を用いると30分でよくなると書いておられますが、まさにそのとおりでした。

漢方がお役に立ててよかったです。

痔核嵌頓の痛々しい画像はこちらのサイトでご覧ください 肛門科jp

痔核嵌頓の西洋医学的な内容については、こちらを参照ください 松島病院大腸肛門病センター

なお中見をみると、治療について以下のように書いてあります。「痛み止めや、軟膏、坐薬を使用し、入浴や坐浴で循環を改善させて腫れが引くのを待ちます。すぐに症状を改善させることは困難です(なんと原始的なのんびりとした治療でしょう!)。腫れがなくなっても再び脱出する可能性があるため、いずれは根治術が必要となります。急性期でも痛みなどの症状が強いときは、手術することで根本的に治療できます。」

皆さんなら、30分で治してくれる漢方治療と入院して22万も払って手術をうける治療とどちらを選ばれますか?

732.抗がん剤(レンビマ)の副作用(手足症候群)の漢方治療

次の症例は74歳、男性です。
平成31年1月に赤穂市の総合病院で、肝細胞癌(直径4cm)が見つかり、抗がん剤の”レンビマ”が開始されたそうです。本剤の副作用は、高血圧手のひらや足の裏の痛みや腫れ(手足症候群;手のひらや足底の痛み、赤く腫れあがる、皮膚がむける、水疱など)、食欲低下・体重減少、蛋白尿甲状腺機能低下症などが報告されており、この方には赤字で書いた症状がみられたそうです。その中でも手指の皮膚が薄くなり、むけて痛むのがつらいそうです。主治医からはステロイドの軟膏が処方されましたが、全くよくならず、ひたすら何回も塗るように指導されたそうです。
当院通院中の奥さんから相談を受け、紫雲膏(しうんこう;症例54参照)を処方したところ、一か月後に、「皮膚が盛り上がってきてかなりよくなりました。」と、感謝されました。なお、レンビマは有効で、腫瘍マーカーのAFPが4700から400に低下したそうです。

漢方がお役に立ててよかったです。

手足症候群の西洋医学的な内容については、こちらを参照ください兵庫県立西宮病院

写真は(株)エーザイホームページより。

733. 乳児湿疹の漢方治療

症例は、平成31年1月31日男児です。2670グラムで生まれ、母乳で育てられています。
平成31年3月29日、顔や体に湿疹が多発し、漢方治療を求めて来院されました。
治頭瘡一方(ちづそういっぽう)1包を、1日2回に分けて処方したところ、4月11日に予防接種来られ、「飲んですぐに頭から下にサーと引いていきました。」といわれました。完全に治っていましたので治療を終了しました。

漢方がお役に立ててよかったです。

乳児湿疹については、症例724にも載せております。

乳児湿疹について(下田 憲先生コメント)

東洋医学的にみると乳児湿疹とアトピー性皮膚炎は全然違います。乳児湿疹はだいたい、特徴的には生後半月くらいから出てきます。適切な治療をすると1歳までに完全に治ってしまうのです。へたな治療をしてしまうと、最悪の場合、脳みそがとぐろを巻いたような脂漏性湿疹にまでなるのです。生後半年ぐらいまでに漢方治療をすると例外なく全部1年間で跡形もなく治るのです。アトピー性皮膚炎はよくなった後も、乾燥肌とかそういうものが残ります。昔この子はアトピーだったのだという状態が残るのです。乳児湿疹は治ると完全にきれいな肌で何の変化も残しません。この治頭瘡一方の単独処方で完全に治ります。

734. 柴胡桂枝湯によりにきびが改善した症例

症例は15歳、女性です。
最近、頭痛(痛む場所は不定)が続くと、平成31年4月15日来院されました(特に漢方を求めて来院されたわけではありません)。
その他の症状として、生理痛・冷え症・にきびがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれし、「瘀血(おけつ)」体質も認めました。痛み止めは体によくないことを説明し、学童の頭痛・腹痛に使う(症例186、304、619、624、680、703参照)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう;症例39、66、155、152、186、304、619、680、703参照)を14日分処方したところ、4月24日にお母さんが来られ、「頭痛も生理痛もありません。それと、何年も皮膚科に通って治らなかったにきびがさーと引いていきました。漢方はすごいんですね。」と大変感謝されました。

これまで、にきびにはあまり柴胡桂枝湯を使ったことはありませんでしたが、今後は使っていこうと思いました。

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にきびに柴胡剤を使用する件に関してはこちらをクリック

735. 非定型歯痛の漢方治療

症例は26歳、女性(私の長女)です。
令和元年5月11日、近くの歯医者さんで右下の一番奥の親知らずを抜歯しました。痛み止めのロキソニンと抗生剤のメイアクトが処方され、それで様子をみていましたが、抜いた場所の痛みはだんだんましになりましたが、3日目ぐらいから関係のない下の前歯(もちろん抜歯前は痛みなし)が、ジーンと1日中痛むようになり、5月16日私に相談されました。
非定型歯痛を考え、抑肝散(よくかんさん;症例24、25、144、479、503、609参照)を2包投与したところ、痛みがかなり和らぎました、念のため翌日朝2包飲み完全に治癒しました。
5月21日、歯科を再診したところ、「虫歯もないし、歯肉も異常なし。また何かあれば来てください。」と治療終了となりました。

漢方がお役に立ててよかったです。

第29回日本疼痛漢方研究会学術集会で、北海道大学大学院歯学研究科高齢者歯科学教室の中澤誠多朗先生は、「非定型歯痛は、歯科心身症の中で頻度が比較的高い疾患で、一般に神経障害性疼痛とされ、抗うつ薬が第一選択薬とされている。抑肝散は神経障害性疼痛に有効とされているが、非定型歯痛に対する報告は認められない。」と述べ、『今回、長期の病悩期間でドクターショッピングを重ねた30代女性の非定型歯痛2症例に対し、抑肝散単独で著効を示し痛みが消失した症例を経験したので報告する』を参考に抑肝散を投与しました。

非定型歯痛については、口と顔の痛み.infoを参照下さい。

要点を以下に抜粋します。
非定型歯痛(atypical odontalgia:AO)は、「レントゲンなどでは明らかな異常が認められない“原因不明の歯痛”で、抜髄(歯の神経を抜くこと)や根の治療を何ヶ月も続けているのに、いっこうに痛みが引かない」という病気です。その痛みは「じんじん、じわじわ」と表現されることが多く、目が覚めている間中持続します。しかしながら、何かに気を取られている時(特に食事中)は痛みがないという特徴があります。そのため、食事に支障はなく、体重が減ってしまうようなことはありません。
歯またはその近くの歯肉、または抜歯した後の部位に生じる痛みで、臨床的にもレントゲンでも全く異常は認められない。
痛みの強さは、中等度から激痛で、じんじん・じわじわする痛みが、ほぼ一日中途切れることなく、数ヶ月から数年にわたって続いている
冷温水痛、負荷などの局所刺激に対する反応は一貫しておらず、これらが常に疼痛を増悪させるとは限らない。
9割が女性。平均発症年齢55歳。
歯科治療は無効、むしろ繰り返すごとに悪化し、痛み止めやブロック注射も無効です。 
一本の歯に生じるもの、多数歯に同時に生じるもの、顔面に広がるものなどさまざまです。
原因(病態生理)は、ストレスで脳の痛み関連領域が暴走していることと推測されています。したがって末梢への治療(歯科治療や痛み止め)が効果がありません。

ヤフー知恵袋にも同様の相談が寄せられておりましたので、紹介させていただきます。

親知らず抜歯後、前歯がうずいて痛痒いです。
23歳男です。
斜めにはえていた下の両端の親知らずの抜歯手術を行いました。
一本目の抜歯から2週間おいて二本目も抜歯。どちらも問題なく終え、1週間が経過しましたが、術後の痛みもおそらく人並み程度?痛かったのですが、こんなものだと思い安心しておりましたが、少し前から、親知らずの痕の付近ではなく、前歯が痛み始めました。歯並びはガタガタですが、それは横に生えた親知らずのせいだというのは知っていたのですが・・・激痛、というほどではないのですが、歯茎が痛痒い感じで、正直、痛いよりも気になります。
抜歯後に前歯に違和感が生じるのはよくあることなのでしょうか?
かかりつけの先生に聞いても少し様子を見ましょう と言われるだけで・・・
よろしくお願いします。

今回と全く同じような症例と考え、紹介させていただきました。

736. 突発性難聴の漢方治療

症例は56歳、女性です。
平成31年3月中旬に右耳の難聴と耳鳴りを来し、耳鼻科で1週間ステロイドを投与され治癒しました。
しかし、再び4月中旬から同様の症状が出現しましたが、ステロイドをまた服用するのが嫌で様子を見ておられましたが、改善しないため、令和元年5月22日、漢方治療を求めてたつの市から来院されました。
朝方は少しは聞こえるようですが、午後からは全く聞こえなくなるそうです。他に喘息があるため、シングレアの内服をされています。
身長158cm、体重46kg、BMI18.4。
発症一週間以内なら、耳鼻科に行くよう指導したのですが、1ヶ月以上たっているため、漢方で治療することにしました。
師匠の下田先生から、突発性難聴は、9割は肝の異常で抑肝散(よくかんさん;症例24、25、144、479、503、609、669,675、735参照)竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう;症例464、467、586、683参照)を使うと教えていただいていたので、併用で1ヵ月分処方したところ、5月28日、電話があり、「8割ぐらい聞こえるようになりました。」と、感謝の電話をいただきました。

病院に来るのが2週間以上と遅れた場合は治りにくいと、下記の北斗病院のHPに書いてありますが、治ってよかったです。

漢方がお役に立ててよかったです。

突発性難聴については、こちらをクリック(北斗病院)

737. 高血圧症とむくみの漢方治療

症例は36歳、女性です。
マッサージに行ったときに、むくみがひどいため、当院をすすめられたそうです。また、血圧も普段140/80くらいで少し高め(父親が高血圧症)だそうです。平成31年4月5日漢方治療を求めて姫路市から来院されました。
身長162cm、体重74kg、BMI28.2と肥満傾向です。
その他の症状として、手足が冷える・肩こりがあります。と九味檳榔湯(くみびんろうとう;症例150、345、346、348、349、406、422、476参照)苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、4月26日に来られ、「血圧が下がり、むくみもましです。」といわれました。そのまま続けたところ、令和元年5月25日に来られ、「むくみありません。」といわれ、血圧を測定すると、120/66mmHgでした。さらに続け、6月24日に来られた時の血圧は、116/80mmHgと下がった状態を維持していました。

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本態性高血圧と苓桂朮甘湯について(下田 憲先生コメント)

本態性高血圧なら、苓桂朮甘湯です(本態性高血圧のメカニズム:体の水分保持量はお腹の中にいる時が100%で、子供で80%ぐらいになり、年齢とともに少なくなり70%ぐらいになる。この水分保持量の切り替わりは案外短い期間に起こるので、ある時それまで80%に合わせて水・食塩を摂取していた人が、体のほうが70%しか水を保持できない状態に変わってきても、急に生活習慣を変えられないので、当然水があふれてきて体にたまり、少しずつ脈管に圧力を加える、というのが本態性高血圧の病態である)。
「今まで低血圧だったのに、今日はじめて血圧が高いと言われました」 この言葉だけで診断がつきます。
降圧剤なしでも苓桂朮甘湯のみで非常によく下がります。

また、九味檳榔湯を高血圧や動脈硬化に応用する場合には、全身倦怠感、特に下肢の倦怠感、水分貯留傾向のある人で、階段をのぼるとすぐに息切れ、動悸がする人に適応します。

738. 治療に抵抗し、2年間続いた咳の漢方治療

症例は60歳、女性です。
2年前から咳(特に夜間)があり、近所の呼吸器内科・アレルギー科専門の病院に通われましたが、全く咳は止まりませんでした。鼻水や痰も認めます。アレルギー検査では、ハウスダスト・ヤケヒョウダニ・カモガヤ・スギ・ヒノキなどが調べられましたが、陰性でした。
薬は、去痰剤のムコダイン2錠 分2、抗生剤のクラリス2錠 分2、逆流性食道炎に使うパリエット10mg 分1、喘息の吸入薬のシムビコートが処方されていました。これで止まらなければ、西洋医学的にはお手上げ状態です。平成31年4月19日、知人の紹介で漢方治療を求めて姫路市から来院されました。
身長158cm、体重65kg、BMI26.0と肥満傾向です。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
呼吸器内科の先生が止めれない咳は、肝咳(症例280参照)か腎咳(症例161、194、238参照)なので、肝咳に神秘湯(しんぴとう;症例74、172)2.5g眠前と腎咳に八味地黄丸(はちみじおうがん;症例42、58参照)5gと逆流性食道炎に使う茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440、463、515、542、550、555、558、565、577、585、594、599、602、603、626、638、657、663、666、677参照)5g 分2を処方したところ、令和元年5月15日に来られ、「咳はだいぶ減りましたが、まだ食事をする時に咳が出ます。」といわれました。さらに続けると、6月24日に来られ、「咳は出なくなりました。」といわれました。本当は、八味地黄丸と神秘湯を別々に投与し、肝咳か腎咳か診断すべきでしたが、2年も咳が続いていたので、早く止めるためにやむなく同時に投与しました。

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739. 奔豚気病と考えられた症例の漢方治療

症例は54歳、女性です。
平成30年3月歯科で抜歯をしてから、動悸がするようになったそうです。更年期障害かもしれないと考え、婦人科を受診したところ加味逍遥散を処方されたようですがあまりよくならず、心配なので10月に循環器科で24時間ホルター心電図検査や心エコー検査を受けたところ、期外収縮を指摘されましたが治療の必要はないといわれたそうです。
その後、いったんおさまったようですが、平成31年2月ごろから動悸が再発、婦人科でホルモン療法や加味逍遥散や柴胡加竜骨牡蠣湯などを処方されましたが、動悸はおさまらず、令和元年6月18日に赤穂市からホームページを見て来院されました。
身長160cm、体重52kg、BMI20.3。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
その他の症状として、不安感が強い・寝つきが悪い・目が疲れる・めまい・髪の毛が抜けやすい・肩こりなどがあります。
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう;症例57、224、286、431、560参照))を合わせて分2で、眠前に六君子湯(りっくんしとう;症例97参照)を処方したところ、7月13日に来られ、「動悸もなく、不安感も消失し、寝つきもよくなりました。」と感謝されました。

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奔豚気(ほんとんき)病について

奔豚気病とは漢方用語で、「不意に下腹部から、ドキドキと気の動きが始まり、それが上へと突き上げてきて、咽喉まで到達すると、息が詰まって今にも死ぬかと思う程苦しむが、またスーと下に降りてきて納まるもの」をいうようです。中にはその場に倒れて意識を一時的に消失する人もいるようです。
子豚がへそのあたりから のどに向かって突っ走ってくるような感覚を例えてこのように呼ばれています。
西洋医学では、パニック障害、強度の不安神経症、神経性心悸亢進、心臓神経症などに該当すると考えられます。
奔豚気病については、こちらをクリック
この特効薬が苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)です。エキス剤ではないので、苓桂朮甘湯と桂枝加竜骨牡蛎湯や甘麦大棗湯を合わせて代用します。

740. 舌痛症の漢方治療

次の症例は42歳女性です。
平成31年の2月終わりごろより、舌がジンジン、ピリピリ(舌の前半分の部位)するため3月6日、知人の紹介で漢方治療を求めて赤穂市より当院を受診されました。
身長150cm、体重61kg、BMI27.1と肥満傾向です。
他の症状として、疲れやすい・心配事が多い・のどが痞える・肩こり・頭痛・口内炎ができやすい・足の冷え・皮膚がカサカサする・髪の毛が抜けやすいなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477、478、480、488参照)加味逍遥散(かみしょうようさん);症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336、349、356、368、371、378、381、391、395、399、405、407、416、419、425、429、430、441、451、464、466、477参照)を合わせて一ヶ月分処方しところ、4月4日に来られ、「舌の痛みはすぐにとれました。疲れもとれ、肩こり・頭痛にもよく効きました。」といわれました。

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741.帯帽感(頭帽感)の漢方治療(4)

症例195、239、291に続いて、帯帽感(頭帽感;上から押さえられたような、帽子か何かを乗せているような感じ)の症例を載せます。
症例は57歳女性です。
平成31年3月中頃から、仕事上のストレスが多く、のどに何かが詰まった感じがし、同時に頭に圧がかかったようで、帽子を乗せているような感じもするそうです。何年か前にも同様の事があり、耳鼻科を受診しましたが、「異常なし。」といわれたそうです。
令和1年5月8日ホームページを見て漢方治療を求めて揖保川町から来院されました。
身長158cm、体重63.0kg、BMI18.8とやせを認めます。
他の症状として、不安になる・心配事が多い・イライラする・食後の眠気・体が重い・息切れ・息苦しい・げっぷが出る・目が疲れる・夜中に目がさめる・腰痛・顔がほてるなどがあります。
舌の色は淡く、腫れぼったく、歯痕舌を認めました。茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440、463、515、542、550、555、558、565、577、585、594、599、602、603、626、638、657、663、666、677、738参照)5g分2と、帯帽感を訴えるのは、加味逍遥散か加味帰脾湯なので(症例195参照)、夜中に目が覚める・眠りが浅いなどの症状から加味帰脾湯(かみきひとう;症例45、193、239、291、308、704参照)2.5gを眠前に加えたところ、7月27日に来られ、「帯帽感(頭帽感)は薬を飲みだしてすぐよくなり、加味帰脾湯は余っています。のどの詰りはもう少しです。」といわれました。

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帯帽感(頭帽感)は、西洋医学では緊張型頭痛の症状のようです。こちらをクリック

742.生理不順の漢方治療

症例は44歳女性です。
平成31年1月の最終月経後、2ヶ月間生理がなく、その後再開しましたが、今度は隔週で来るようになったそうです。
令和1年5月12日に生理が始まりましたが、現在に至るまで止まらなくなったそうです。生理にはレバー状の凝血塊を認めます。知人の紹介で、令和1年6月7日、漢方治療を求めて来院されました。
身長152cm、体重70.0kg、BMI34.2と肥満を認めます。
他の症状として、体がむくむ・頭痛・心配事が多い・乗り物酔いする・汗をかきやすい・首や肩がこるなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。六君子湯(りっくんしとう;症例97参照)桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照)コウジン末(;症例449参照)を合わせて1日2回処方したところ、7月5日に来られ、「飲んだその日に生理が止まりました。」といわれました。さらに続けたところ、8月2日に来られ、「今回は普通通りに生理が来て、ちゃんと1週間で終わりました。」といわれました。
症例159にも書きましたが、生理がだらだら続くときは、脾虚と考え、六君子湯や十全大補湯を入れます。

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743. 起立性調節障害の漢方治療

症例は13歳2ヶ月、男性です。
今までの経過が問診票に詳細に書かれていますので、転用します。
平成30年9月25日、めまいで近くの耳鼻科を受診。メリスロン、カルナクリンを処方されましたがよくならないため、姫路市の総合病院の耳鼻科と小児科にかかり、検査後、起立性調節障害との診断を受けました。メトリジンを処方され、12月28日まで飲みましたが、副作用として腹痛・頭痛がし、めまいの改善が全くなかったため、リズミックに変更されたそうです。しかし、さらに腹痛がひどくなったためメトリジンに戻されましたが、結局状態は改善されないため、平成31年1月で服薬を中止されたそうです。2月からは同病院に、月1回か2回の頻度でカウンセリングメインで受診を続けられたそうです。
平成30年10月いっぱいまでは、登校も早退しながら行けていましたが、11月からは全く学校に行けていないそうです。
夕方5時くらいまでめまいがひどく、天気が悪い日は頭痛もあり、腹痛も度々あるそうです。
平成31年6月下旬からは、夕方から夜間にかけてもめまいがするようになり、手足も冷たくて、夜も眠れない状態になったそうです。
令和1年7月11日、姫路市から知人の紹介で当院へ来院されました。
身長150cm、体重37kg。
他の症状として、体がだるい・疲れやすい・乗り物酔いをする・寝つきが悪い・途中で目が覚める・手のひらに汗をかく・顔ののぼせ・息切れ・動悸・のどが渇く・耳鳴り・痰・鼻水・胸やけ・首や肩がこる・やる気が出ない・不安・気分が沈む・心配事が多いなどがあります。
問診票の”その他どのようなことでもよろしいのでご記入ください”という欄には、「少しでも気分・体調が楽な時間を作ってあげたいです。」とのお母さんの切実な願いが書かれていました。
この方の舌は特に異常を認めませんでした。六君子湯(りっくんしとう;症例97参照)苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)1日2回処方し、腹痛・頭痛対策に柴胡桂枝湯(さいこけいしとう;症例39、66、155、152、186、304、619、680、703参照)を眠前に1包を合わせて一ヶ月分処方したところ、8月8日にお母さんが来られ、「台風が近づいた時に軽いめまいがあったくらいで、調子いいです。笑顔がみられ、目に見えてよくなっています。自分の好きな事をしたり、夏休みの課題もこなせています。」と大変感謝されました。

漢方がお役に立ててよかったです。

漢方医学の立場から見た場合、山本巌先生が提唱された、「フクロー型体質」の症状の一つとして起立性調節障害を生じることがあり、病気というより体質の問題であると考えられています。

「フクロー型体質」についてはこちらをクリック下さい。

744. 顔の皮疹の漢方治療

症例は67歳、女性です。
平成30年4月より顔がヒリヒリと痛痒く、特に目の周囲やおでこがひどかったそうです。5月には顔全体が真っ赤に腫れて、皮膚科でステロイドの点滴でいったん落ち着いたそうですが、その後繰り返したそうです。11月19日に知人の紹介で漢方治療を求めて、佐用町から当院へ来院されました。
身長153cm、体重41kg、BMI17.5とやせを認めます。
他の症状として、汗をかきやすく、のぼせるそうです。立ちくらみも多いそうです。
梔子柏皮湯(ししはくひとう;症例127、276、314、443、588,686参照)白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう;症例618参照)を1日2回で1ヶ月分処方したところ、12月15日に来られ、「痒みもよくなりました。」といわれましたので、さらに1ヶ月分を処方し、治療を終了しました。
すると、平成31年4月15日、「落ち着いていたのに、また痒くなってきました。」といって再来院されましたので、前と同じ処方をさせて頂いたところ、令和1年5月27日に来られ、「首から上が恒ににかさかさします。」といわれましたので、温清飲(うんせいいん;症例605参照)1日2回に変更したところ、 7月1日に来られ、「皮膚のかさかさはましですが、汗をかいたらまだ少しひりひりするのと、夜間が痒いです。」といわれましたので、眠前に前述の梔子柏皮湯を1包追加したところ、8月7日に来られ、「今度は完璧に薬が合って、とても調子がいいです。」と喜んでいただきました。

同じような症例を症例605、632、651,720にも載せております。

漢方がお役に立ててよかったです。

745. 大人の「フクロー型体質」の漢方治療

症例743で紹介した「フクロー型体質」と考えられた大人の症例を紹介します。
症例は51歳、女性です。
2,3年前より体がだるく、疲れやすくなり、この1年ほどはすっきりと朝が起きれない日がほとんどになりました。
また胃腸も弱く、食べ過ぎたり、油っこい物をとるとお腹をこわしたり、胃もたれをするようになりました。
近くの内科を受診し、胃カメラや腹部エコー検査等を受けましたが、異常なかったそうです。
令和1年6月22日、たつの市から知人の紹介で当院へ来院されました。
身長150cm、体重39kg、BMI17.3とやせを認めます。。
他の症状として、体が重い・疲れやすい・暑がりの寒がり・鼻水・のどが渇くなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。六君子湯(りっくんしとう;症例97参照)苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)を1日2回処方したところ、7月13日に来られ、「胃もたれはしなくなりましたが、まだ朝がだるいです。」といわれましたので、コウジン末(;症例449参照)1日2回を追加し、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を眠前に1包追加したところ、8月13日に来られ、「いつもなら、夏バテするのに今年は夏バテしません。それどころか、2週間前に元気に韓国旅行に行けました。朝もきっちり起きれます。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

746. 足底筋膜炎と考えられる症例の漢方治療

次の症例は46歳、女性です。
今まで何度か他の症状で、漢方治療を行った患者さんです。
身長152.0cm、体重46.0kg、BMI19.9。
今までの経過を簡単に書きますと、胸に空気の塊がある感じで、胸が痞えると、平成30年11月26日に初診で来院されました。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう;症例64、102、103、373、591参照)を処方したところ、12月25日に来られ、「よくなりました。体がぽかぽかします。」といわれました。
次に、平成31年4月20日に、「夜になると、窓が全部閉まっているか不安になる。」といわれ来院されました。半夏厚朴湯1日2回に、
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)を寝る前に1包足して処方したところ、5月22日に来られ、「治りました。」といわれました。
次に、令和元年7月12日に、朝と夕方に足の裏が痛み、整形外科を受診したところ、「骨には異常なく、足底筋膜炎ではないか。」といわれ、痛み止めが出て、電気治療を受けたたそうですが、痛みは改善せず、足もむくむため、漢方治療を求めて来院されました。
麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう;症例439参照)と半夏厚朴湯を1日2回合わせて処方したところ、8月3日に来院され、「1週間目の朝、痛みなく階段を下りれたのでびっくりしました。」といわれました。
漢方がお役に立ててよかったです。
同じような症例を当院の漢方著効例9の症例439にも載せております。