漢方薬に副作用はありませんか?

残念ながらそうは言えません。漢方薬にも副作用があり得ることは是非知っておいていただきたいと思います。
たとえば食欲がない、胃がもたれる、下痢、便秘、動悸、不眠、尿が出にくい、湿疹などは時々経験する副作用です。しかし、漢方薬の場合、原因になる薬の服用を止めればすぐに治ります。

漢方薬が原因で肝障害が起きることも報告されています。肝障害は、かなり重くならないと自覚症状がありません。比較的肝障害を起こしやすい漢方薬はある程度わかっていますので、該当する漢方薬を長期に服用する方は、副作用チェックのために年に2回程度は血液検査をお受けになるようお勧めします。

薬剤性肺炎(解説はこちらのサイトをクリック日本呼吸器学会)という生命に関わる副作用も、稀ではありますが報告されています。幸い当院では経験がありません。薬剤性肺炎では、咳、発熱など風邪と区別がつきにくい症状も出ますが、特に息切れが強く現れ、特有の聴診所見が聴かれるといわれています。もし万が一、急に強い空咳と息切れが現れてきたような場合は、薬の服用を中止して至急御連絡ください。

また甘草(かんぞう)という生薬に含まれるグリチルリチンという成分のために、血清中のカリウムの値が下がって不整脈や筋肉の脱力、むくみ、血圧上昇といった副作用が現れることがあります。甘草の服用を止めれば元に戻りますが、発見が遅れると生命に関わることもある怖い副作用です。
甘草は多くの漢方薬に配合されているだけでなく、仁丹や調味料などにも使われており、医師も患者も知らぬ間に大量の甘草を服用する結果になっていることがあります。

当院では、この副作用の早期発見の意味もあって、受診時に血圧の測定をしていますが、自宅でも血圧を測定していただくようお願いする場合があります。

漢方薬は、自然に育まれた植物や動物由来の生薬なので、「自然の治癒能力」そのものです。副作用は全くないわけではありませんが、長い年月をかけて発展してきたものですので、身体に優しいことは確かです。

一般的・総括的に言えば、漢方薬は現代西洋医学の薬に比べれば、かなり安全な薬と考えて良いと思います(正確なデーターはありませんが、臨床経験上、西洋薬の1/100~1/1/1000と言われてます)。当方はもちろん、そのあたりを十分意識して使っているつもりですが、ご心配がある時には、診察の時に遠慮なく御相談ください。