一度悪くなってから治ると聞きますが本当ですか?

麻疹(はしか)の時、皮疹が出るのを抑えるのではなく、出るのを助けてあげた方が結局早くよくなったり、風邪の時も、熱を下げるのではなくて、熱を上げた方が早くよくなります。こういう考え方は漢方では常識です。このような場合とは違い、医師にも予想外の症状変化が起きて驚いたが、それがきっかけとなって、長く続いた病気が治った、というような話を瞑眩(めんげん;症例411、447、548、552参照)と呼んでいます。瞑眩か副作用かの判断は、患者さんにとっては大変難しいので、医師に直接ご相談下さい。

最初の例とも二番目の例とも違うような悪化は、単に薬が効いていないか、かえって薬のために悪くしてしまっただけ、と考えるべきだと思います。

一般に、一度悪くならないと良くならない、などということは、ありません。

瞑眩について

漢方薬が著効を示す直前にみられる特殊な生体反応と定義されます。
たとえば、病状の一時的増悪の見られることが多いようですが、鼻出血、多量の鼻汁、嘔吐、下痢、不正性器出血、帯下、下血など、粘膜面からの急激な分泌亢進あるいは出血が起こったり、湿疹、じんま疹などの皮膚症状が起こったりすることもあるようです。

通常、服用開始後、数日以内に見られ、その後、病状の急速な改善をみることから、副作用と鑑別できるとされています。

青山稲木クリニック院長の稲木一元先生は、次のように述べられています。

実地臨床において、本当の瞑眩は比較的まれで、予測困難な現象であり、起こった時点では瞑眩か副作用かの鑑別は困難です。
経過をみて、短期間で急速に改善した場合に、はじめて瞑眩だったと判断できるのであり、起こった時点では副作用と区別できません。これは困ったことです。私自身は、瞑眩であれ副作用であれ、患者さんから異常な症状の訴えがあった時点で服用中止を指示します。

まず安全策をとるわけです。そしてその症状がその漢方薬の副作用として報告されている事例に合致するかを検討して、副作用であれば必要な処置を行います。逆に、副作用報告に合致せず、しかも不快感のない症状であった場合には、患者さんと相談して同意があれば、もう一度同じ薬を服用してもらうこともあります。

再投与は、まず少量(1/3~1/2程度)かつ短期間(数日から一週間以内)としています。これで問題がなければ漸増して、経過を観察し効果を判定します。ただし、少しでもアレルギーが疑われる場合には再投与は行いません。なお、瞑眩を好転反応と称して、薬の服用後に出た不快な反応を、「もっと飲めばなおる」とし、患者さんが不快な反応に耐えられずに中止すると、「十分に飲まなかったから治らなかった」とする輩(やから)があります。論外というべきでしょう。