風邪の引き始めは、上手に汗を出すことが大切です。漢方薬を温服(おんぷく)して、うどんやお粥などの温かい食べ物をとって治してください。
漢方では汗を出して風邪を治すことを「解表(げひょう)」といいます。
まず、インフルエンザなどでは、寒気、頭痛、発熱が引き始めの代表的な症状ですが、汗がすでに出ている人は、桂枝湯(けいしとう)を服用し、汗が出た分を温かい飲み物で補充してください。
熱が出ても汗が出ない人は葛根湯(かっこんとう)、あるいは麻黄湯(まおうとう)を2~3時間毎に汗が出るまで服用してください。汗を出すのを漢方薬が手伝います。5分ぐらいで体が温まった感じがして、じわっと汗が出てきて、30~40分で解熱に向かいます。汗が出た後は脱水に成らないように、温かい飲物をとってください。
麻黄湯と葛根湯は「麻黄(まおう)」という、胃にもたれる生薬が入っていますので胃腸が弱い人や、続けて服用する方は注意してください。

さて、麻黄湯と葛根湯のどちらを選ぶかですが、これは結構、専門家でも難しいです。
師匠の下田憲先生によると、簡単な鑑別法は、

  • 麻黄湯は顔が紅く、布団をかけると、「もう暑くていやになる」、あるいは、「具合が悪くなる」と訴えます。
  • 葛根湯は普通の顔で、布団をかけると、「気持ち良い」といいます。
  • 子供では布団を跳ね除ける(=麻黄湯)か、布団にもぐってしまう(=葛根湯)か、
    で鑑別する、これが一番確実な鑑別法だそうです。

間違っても、インフルエンザ=麻黄湯、普通感冒=葛根湯ではありませんので、ご注意ください。

インフルエンザでない、普通感冒では、参蘇飲(じんそいん)が良いでしょう。参蘇飲は、”漢方の総合感冒薬”と呼ばれている方剤です。
鼻水やくしゃみなどの鼻かぜには、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)小青竜湯(しょうせいりゅうとう)が有効です。
寒気がないのに熱がある(高熱でも重症感のない場合がよい)時には、桂枝湯と麻黄湯を合わせた桂麻各半湯(けいまかくはんとう)を使います。
汗の有無を問わず、非常に強い症状があろうがなかろうが、咳をしていようがいまいが(かぜの初期から咳のでるような場合や、少々かぜをこじらせて、かすかに寒気が残り、咳がなかなか止まらないような時にもよい)使えるので非常に使いでがある薬です(下田先生)。
のどの痛みには桔梗湯(ききょうとう)が有効です。飲み方は、1包分を湯水なしにそのまま口に含み、自分の唾液で少しずつ溶かしながら嚥下すると良く効きます。



具体的な症例は、こちら画像の説明

当院の漢方著効例の症例7 インフルエンザ?

当院の漢方著効例7の症例344 インフルエンザ様疾患の病初期に葛根湯の短時間頻回投与法が著効した症例

当院の漢方著効例8の症例358 インフルエンザ様疾患に対する漢方薬の間違った使い方の症例

  • 引き始めのかぜを追い払う特効のツボ療法
画像の説明
  • 風門(ふうもん)‥首を前に曲げて、後ろ首のつけ根を触ると、ぴょこんと突き出た大きな背骨の出っ張り(第7頚椎)があるのがわかります。

そこから下がって、二つ目の背骨の出っ張り(第2胸椎)と三つ目の出っ張り(第3胸椎)の間から、左右へ指幅二本分だけ外側にあるツボが風門というツボです。

暖かい部屋で、ここを歯ブラシで、縦に、下に向かって1~2分こするか、ドライヤーをあてると引き始めのかぜを追い払えるといいます。

 

  • 風邪「ふうじゃ」の話

現在の“風邪(かぜ)”と古代中国の“風(ふう)”はその意味合いが異なっています。古代中国で言う風とは空気のように動く物(気)です。古代中国では、にわかに病気になったことを風のように目に見えないものが体内に入り作用していると言ったのでしょう。

風は隙間があるとどこへでも入って行きます。人間にも隙間があります。疲れなどで体が虚ろになっている状態のことです。

風はまず汗腺から入ります。汗腺が開けば発汗して冷えをおこし、汗線が閉じればうつ熱して煩悶をおこします。
この、風が皮膚の表面に入った状態を”感冒(かんぼう)”と言い、発汗すると、汗とともに風邪(ふうじゃ)を体内から追い出すことができると考えられています。
それが悪化すると風邪は絡脈に入り込みます。この状態が”傷風(しょうふう)”といわれ悪寒や発熱の症状になり、この状態になると発汗のみでなく気の流れをととのえていくことが必要だとされています。

さらに風が進行すると今度は内臓に入ります。これを”中風(ちゅうふう)”といい、様々な病をもたらすと言われています。中風の症状には半身不随や言語障害・意識障害などがあるとされています。
予防的な観点から身体が虚ろになるような様々な原因を避ける工夫が健康につながるというのは、現在でも共通していえることではないでしょうか。
(黄帝内経より )

インフルエンザ検査について(西洋薬の場合)
ご家族にインフルエンザに罹患した方がいて、明らかにインフルエンザの症状がある方には、検査を行わない場合があります。
※検査をしなくてもインフルエンザ薬の処方は致します。

予防対策について

  • 手洗い・手指の消毒
    自分が感染していない場合、手洗いにより手指を介する接触感染を防ぐことができます。
    自分が感染している場合、手洗いにより接触感染による感染の拡大を防ぐことができま
    す。(速乾性のアルコール製剤による手指消毒も有効です。)
  • うがいの励行
    外出後の“うがい”も感染予防に効果があります。
  • 咳エチケットについて
    咳・くしゃみが出たら、他人にうつさないようマスクを着用しましょう。
    マスクを着用してない場合は、ティッシュなどで口と鼻を押さえ、他の方から顔をそむけて1m以上離れましょう。
    鼻汁・痰などの付いたティッシュはごみ箱へ捨てましょう。

まとめ
マスクの着用は患者さんにするのが有効です。ウイルス自体はマスクを通過します。
しかし、インフルエンザは飛沫感染です。くしゃみ、鼻水に中にはウイルスが塊の状態で排出されます。これをマスクがキャッチします。
手を洗うことは重要です。インフルエンザウイルスは石けんで洗うとすぐに死滅すると言われています。
もちろん外出時にはマスク着用は有用です