舌痛症は、「心理情動因子に起因し、舌に異常感を訴えるが、それに見合うだけの器質的(肉眼的)変化のないもの」と定義される舌の慢性疼痛であり(永井哲夫先生)、治療に難渋する場合が多い。
発生機序はいまだ解明されていない部分が多いが、疼痛部位局所の血流低下や、副交感神経機能の減弱による相対的な交感神経機能の緊張が舌痛症に関与しているとの報告がある。
永井哲夫先生は、舌痛患者に心理テストを行ったところ、「癌恐怖」傾向は約半数にみられ、また、一般歯科治療患者と比較して抑うつ傾向を示す患者が有意に多く、舌痛症は気虚と心気症と近縁な病態であると述べられています。
また、中奈央子先生は、日常生活の中でのストレスなどが引き金となり、過剰適応をお越した結果、心身相関により「舌」という器官に「痛み」という形で症状が表現された心身症が背景にあると述べられています。

舌痛症の治療では、向精神薬やビタミン剤、タマサキツズラフジ抽出アルカロイド(セファランチン)、抗真菌薬などによる薬物療法や神経ブロックなど様々な治療が試みられているが、単一な病態ではないため確立した治療法はなく、しばしば治療に難渋します。

治療者は、患者の訴えを共感をもって傾聴および受容し、舌痛症はれっきとした病気であり、治療を継続することで症状は軽減するし、舌癌などの病態ではないことを説明する支持療法的な心理療法を受診の際に繰り返し行うことが肝心であると井筒崇司先生は述べられています。

漢方薬には心因的な要因を取り除く作用、唾液の分泌を促す作用などがあります。
効果があるとされている漢方薬は、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、柴朴湯、立効散、半夏厚朴湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、白虎加人参湯、温清飲、麦門冬湯、六味丸、六君子湯、黄連解毒湯、葛根湯、小柴胡湯、半夏瀉心湯、五苓散、芍薬甘草湯、十全大補湯、補中益気湯など20種類ほどはあります。

舌痛症の漢方治療については、

当院の漢方著効例4
の症例164
当院の漢方著効例8
の症例375、395
当院の漢方著効例9
の症例429、437
当院の漢方著効例10
の症例491、493
当院の漢方著効例12
の症例558、590、591
当院の漢方著効例14
の症例672
当院の漢方著効例15
の症例740,747
当院の漢方著効例16
の症例772

を参照して下さい。